シャチ8
「た、助けてくれて、ありがとう……」
すぅはぁと深呼吸を何度か繰り返して気を沈めたらしい子供は、意を決した顔をしたかと思えばわざわざかがんで私と目をあわせてきた。何をするのかと様子を見守っていたら子供のくちから出てきたのはそんな言葉。思わずぽかんと口を半開きにしてしまった私に、というか私の鋭い歯にびくびくしつつ子供はさらに言葉を続ける。
「ぼく、弥三郎って言うんだ。逆叉さんの名前はなに?」
名前ね名前……いや普通動物にそんなこと聞くわけないだろ。そもそも答えられないし、あと君は男なのか?それとも僕ッ子というやつか?どっちだ。
「たすけてもらったらお礼しなさいって父さまが言ってたから、ぼく、逆叉さんにお礼がしたい」
……まぁ性別のことはともかく、この子はとてもいい子らしいのは間違いないみたいだ。
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