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あれれー?と首をかしげる俺に、官兵衛さんがところでここは何処だと訪ねてきた。紙に東軍の本拠地的なそれ、と書くと帰ってきた嘆き声。

「なぜじゃ………」
「………」

いや本当に何故だよ。なんでこんなところにって感じだよ。俺じゃなかったらあなたきっと死んでましたよ。いや鶴姫ならもうっ☆駄目ですよこんなところにきちゃ、熊さんお山に帰りなさいぐらいで平気かもしれないけど。ん、まぁいいや。ねぇそれより官兵衛さん和菓子たべよー、孫市からもらったの。

「……和菓子」
「………」

お茶はないけど。でもきっとすごく美味しい。じいちゃんちに居た時みたいに。
懐の和菓子を半分に割って、その片割れを官兵衛さんのまだ拘束されてる手の上に落とす。官兵衛さんはぼんやりとそれを見て、ちょっと顔を歪めた。

「風切り羽、お前さんは………」
「…………」

んー?と彼の顔を覗き込む。ちょっと泣きそうな顔をしていた官兵衛さんは、へらりと笑って和菓子を食べた。美味いな、と言われたのでそれに頷いて俺も菓子を口にする。
ああ、俺は殺しが一番だけど。こうやって官兵衛さんと一緒にいるのもきらいじゃあないな……。じいちゃんもいれば尚更良しだ。少しだけ心の底に生まれた、この時間がずっと続けばいいっていうささやかな願いはでもでも残念だけど叶わない。なぁじいちゃん、なんで俺とじいちゃんは東で官兵衛さんは西なんだろう。あんなにあんなにええと。楽しい、そう、楽しかったのに。

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