32


ふんふん鼻歌を歌いながら懐に入れた和菓子を撫でる。おれ、この監視がおわったら一休みして和菓子もぐもぐするんだ………。
無表情ながらもにこにこしつつ木の上で腕をくんでかっこつけつつ周りを見張る。忍者とかいたらとらえて拷問するのが俺の役目。さっきの忍者君は今日で3人目ですっ!誰だー送ってくるのは―。命を無駄にしちゃいかんぞー。

む、なんかちょっと黄色いのが山の中で動いてる。でもここからじゃ木がじゃまであんまり見えないなぁ。
しゅたたと木の上を走り、その動物じゃない何かの近くへ。あ、人だ人。また俺の仕事が増えたぁ。えへへ。よっしゃつーかーまーえーるー!
っと思ったんだけど痺れ薬クナイをまだまだ遠いその人影に投げつけようとした所で、相手が喋った。聞き覚えのある声、口調、あ、後ろのあれってもしかして。

「ここは何処じゃあ……」
「………。………!」

かんべえさんっ!官兵衛さんじゃないですかやったー!
つい我を忘れて眼下の官兵衛さんの前に降り立つ。風切り羽!?と慌てるのに結構前に教えてもらった笑い顔を見せるとちょっと強張ってた体から力が抜けた。

「………久しぶりだな」
「…………」

うんすげーおひさー。
頷くと官兵衛さんはちょっと笑って、俺の兜かぶったままの頭をぽんぽん叩いた。お前さんはかわらんな、と言われてその声の優しさに目を細めて……ってあれ、なんだろうなこの安心感。なんかじいちゃんと一緒にいるみたいだな。

prev next

[back]