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そうそう、官兵衛さんは俺の事を風切り羽と呼ぶ。まぁ、嫌じゃないから放っておいてる。いいじゃんかっけーじゃん風切り羽。それなかったら鳥とか只の肉の塊じゃん。

「…………、」

ああー。やっぱり殺しの後は高ぶるなー、と思う。血って興奮すんだよ、思わずにこにこしちゃうぐらいには好き。生臭いんだけどほんのり甘くてそれで鉄臭いんだけどなんかいい匂い。ひひ、でも一番楽しいのはお目目きゅっぽんした時だ。スプーンとかあったらなぁ、きゅるってとれると思うんだけど。あー、今度つくろう。

「……、…………」
「おお、風切り羽!」

あっ、官兵衛さんやーん。どないしたんすか、なんか俺に用事ですか。今下半身がね、ちょっとね、やばいんだけど。

「風呂に入りたくてなぁ、すまんが手伝って貰えんか?」
「…………」

是非もなし!と言いたい所だけど、んん、うう。ええ。んー、でも官兵衛さんの頼みだからなぁ。俺頑張りますぅ。途中でいなくなったらごめんね。

「…………」
「助かる!小生一人だとどうしても限られた所しか洗えなくてなぁ」

こくりと頷けば官兵衛さんは長い前髪の下でにっこり目を細めた。この人もじいちゃんみたいにちょっとほっとする人の一人だ。熊みたいだけど。うでとか俺の二倍あるっていうか、風持ちな俺はあんまり余計な筋肉とかつけてない。だから差がまじやべぇ。ちょっと憧れる、いいなーむきむき。

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