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目玉つるつるして美味しかった。視神経を一本一本むしりとってから極上の飴を舐めるみたいに口のなかでたっぷり味わってそれからゆっくり歯をたてて、溢れ出る生ぬるい液体を飲み下す。食道に引っ掛かりながら胃の中に落ちていく目玉に満足。誕生日祝いのケーキよりも美味しい。
ごちそうさまして女だったものを畑に埋めた。美味しい野菜が沢山とれますように。
「××ー、彼女さんの親御さんから電話来てるわよ」
「うん、今行くよ」
娘を知らないか、だって?知ってる知ってる、俺の畑のなかで虫に分解されるの待ってる。とは言わないで、今日町中で別れたばかりですって不思議そうに答える。どうしたんですか?えっ行方不明!そんな、僕とわかれたのは家からそんなにはなれてない場所で、ええ、ええわかりました。僕も探してみます。はいそれでは失礼します。
「どうしたの?」
「行方不明なんだって……俺ちょっと探してくる」
「えっ」
「ご飯食べちゃっていいよ!」
がさがさパーカー羽織って外に走り出す。気分はこの上なく高揚していた。警察犬に出会うまでは。
「何処でわかれたんだい?」
「ここです」
「そうか……ほらジョン、この匂いを探してみてくれないか」
警察が犬に彼女の持ち物を渡す。ふぐふぐと匂いを嗅いだ犬が、俺を見て吠えた。あーあ、これだからよぅ、俺は犬が嫌いだ。あいつら腐ったものが大好きだし鼻がいい。
「どうしたんだジョン」
ばうわう!ったくうるせぇったらありゃしねえ。
「ジョン?なんで××さんに向かって吠えるんだ」
ばうわう!ばうわう!こいつから娘さんの匂いがしますってんだよ阿呆。無能!
「きひっ」
「××さん……?」
ばうわう!俺は走り出す。警察犬が俺を捕らえんと飼い主の手を振り切って追いかけてくる。なんでかって?犬畜生は逃げるものをみたら追いかけたくなっちまうんだよ。知ってた?そらそらこっちおいでジョン。
「一緒に死のっ!」
ばうわう!T字路でトラックに犬と一緒に押し潰されそうになったところまではしっかりくっきり覚えてる。
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