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最初は虫でも満足できた。何よりお手軽に手に入ったし、殺しやすかったから。トンボを母が庭で育てている薔薇のとげに刺しておくと、いつのまにか蟻が寄ってきてその身にたかって肉を全てちぎって外殻だけにして巣に帰っていくのを発見した。母親が得体のしれない残骸に怯えるのをあれはモズのはやにえっていうんだよって教えてやって、責任転換した。母親はほめてくれた。物知りなのねって。

「物知り?」
「××ちゃんは頭がいいってことよ。よく知ってたわねそんなこと」
「うん!あのね、図鑑でみた!」
「すごいわねー、じゃあモズが近くにいるのかしらね」
「ねー、僕本物見てみたいなあ」

きゃあきゃあとはしゃぐ。へへへと媚を売る。大義名分が出来た。薔薇のとげを全部標本にしよう。ぐさってさして、モズのはやにえ。

「××ちゃん、ご飯にしましょう?」
「ん?うんおかあさん」
「あら?何持ってるの?」
「んとねーモズさんがまたお母さんの薔薇に虫さんさしてたからねぇー」
「あらありがとう、取ってくれたのね」
「うん!」

変に隠さないほうがばれないって知ったのは母親の御蔭だ。手に持っていた足をすべてもいだ女郎蜘蛛をしたに落として、母親の元へ走る。最近蟻の巣が多くなった。たぶんご飯をいっぱいあげてるからだ。

「お肉だけじゃなくてお水もあげなくっちゃ」
「え?なぁに?」
「んーん、なんでもない」

うふふと笑ってカレーを食べる。おいしいなぁお母さんのカレー。そういえば色で思い出したけどチョコレート。蜘蛛のお腹はチョコレートの味がするんだって、後で食べてみよう。もしあの蜘蛛がありに食べられてなかったら、あの蜘蛛を食べてみればいいや。


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