大好きっ!


肉が好き。血が好き。なんでも解体したり引きちぎったりするのが大好き。

「あ、やだ××ちゃん。カマキリにそんなことしちゃだめでしょ!」
「えーなんでー?」
「なんでって・・・気持ち悪くないの?」
「だってカマキリさんちょうちょさんのことたべてたんだよー」

だからめっした!と母親にばらばらになった蟷螂を見せる。ひぃと息をのんだ母親が捨てなさいというのにしたがってべしゃりとそれを地に投げ捨てる。こぼれ出たクリーム色の卵が俺の手を汚す。どんな味がするのだろうとじっと掌をみていると母親のハンカチでそれを拭われた。

「なにかしらこれ・・・変な色の泥ね」
「これねーカマキリさんの卵」
「ひ!?」
「あ、お母さんはんかちが」
「いいわよそんなハンカチなんて、やだ、汚いわ。××ちゃんはやくお手手あらいましょう、早く」
「・・・・・うん」

公園の端っこに捨てられた卵で汚れた白いハンカチを、母水道へ急かされながら見送る。隣に横たわっている腹をちぎられた蟷螂がひくひくうごめいてるのをみて、虫は中々しなないなぁと思った。あそこに戻って、ちゃんと殺してあげたかったけど母親に見られてるから無理。

「んー・・・・」

クリーム色の卵。少し焦げたシチューの色。今日はシチューが食べたい。シチューの海老は芋虫にそっくりでぷりぷりしてる。草の根っこを引っこ抜くと出てくるやつ。

「お母さん、シチューが食べたい。海老さんも」
「・・・・・ええ、家に帰ったら作ってあげるわ」
「やった!」

へへ、と笑う。貼りつけて笑う。母親と話してるより何かを殺してた方が楽しかった。つまんないなぁと思いながらもう一度後ろを振り返る。でももう蟷螂もハンカチも何もかも遠くて見えなかった。少し残念。


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