シャチ14
「きゅるる……」
国親がここに来て弥三郎の事を私に伝えてから2週間が過ぎた。弥三郎はまだ来ない。でも私は待っている、彼にもう一度会えるという望みを胸に抱いて。
「ぐぁう!」
じゃばりと海に潜る。今日は波が穏やかだ。だから日の光が綺麗に差し込んで、海中には幻想的な風景が広がっている。砂に隠れてるヒラメも見えるし昆布はふらふら踊ってるし、海が澄んでるからかなり先まで見通せる。
「ぎゅ……」
弥三郎にもこの景色を見せたかったなぁと思いつつ、綺麗な色をした貝を見つけて口にくわえる。たまに国親が来てくれるのか、岩場に弥三郎にあげたかった物を置いておくとそれがしっかり回収されているのだ。まぁ他の人間が盗っているのかもしれないが、こんなに美しい貝殻や珊瑚を私と弥三郎が独占するのもなんだかなぁと言った感じなので気にかけてはいない。海の中には素敵なものがまだまだ沢山ある。
「…………」
海面へ上昇して岩場に貝を置く。そこに誰もいないことが寂しくて私は思わず鳴いた。でも返事をしてくれる生き物は誰もいなかった。
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