サヨナラ10


「次は負けねぇからな」
「僕だって、またがんばってグリーンに勝つ」

ポケモン達をボールに戻し、ちょっとだけ二人で睨みあって笑う。今のところ1勝1敗、引き分けだ。

「ねぇもう一度、勝負しようグリーン」
「…………あ?」

俺らの手持ちは疲労困憊だ。ポケモン勝負はさっきしたばっかりだし、リアルファイトでもないだろう。言いたい事がわからなくて、さっきと同じような目をして微笑むレッドを見つめる。ひゅう、とトキワシティの方から風がふいてレッドの帽子を揺らした。男にしては長い髪の毛が、煽られてぶわりと広がる。

「僕と君との勝負。もしまたバトルが出来て僕が勝ったら、僕にご褒美をちょうだい」
「褒美?」
「うん、僕達はこれからオーキド博士のお手伝いのために、カントーを巡るでしょう」
「ああ」

それがなにか、と首を傾げるとレッドは寂しそうに笑った。

「その旅が終わるまで、僕らは別行動。離ればなれ」
「…………まぁ、な」

俺がそう仕向けたし。
予想外に気落ちしてる様子のレッドを見て頭を掻く。でも、確かに私情も混じってはいるがその方が効率がいいんだ。現にレッドはミュウを目撃した。俺はミュウを見なかった。たった半日の間にこうして差がでる。この先もこういった事は起こるだろう。だからこその別行動だ。

「だから、僕が頑張るためのご褒美を、僕にちょうだいグリーン」
「………」

今日のレッドはよく笑う。緊張している証拠だ。だっていつもは無表情だもの。

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