サヨナラ9


結論から言えば負けた。1VS1のバトル。研究所の時は一方的にやられていたレッドとフシギダネが、今回はこんなにも俺とヒトカゲを押してきて。声で、時に手で合図をしながら俺はその面白さに笑った。

「ヒトカゲ!ひのこ!」
「フシギダネ!かわしてたいあたり!」

ごお、と音を立ててヒトカゲの口から吐き出された火の玉を、フシギダネが指示通りにかわす。つるで地面を叩いて加速して、フシギダネのたいあたりは見事にヒトカゲにクリーンヒット。急所に一撃。
実に見事なもんだった。レッドの運も、実力も。これが、主人公かと、そう思ってしまうぐらいに。

「かっ、……た?」
「…………ああ」

俺達負けたぞ、ヒトカゲ。一度地面に倒れ込んで、それからひんし状態なのにがんばって起き上がったヒトカゲの頭をなでて労る。ぎゃう、と小さく鳴いたヒトカゲが俺を見る。もっと強くなろう、彼の目はそう俺に訴えかけていた。

「そうだな……」

さっきまではどうでもいいと思ってた。俺はただ図鑑を集めて、それでいいと。でも違う、俺は悔しい。彼に負けた事が、こんなにも悔しい。レッドも、研究所で俺に負けた時こんな気持ちだったんだろうか。

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