サヨナラ8


これ、なんだろうねとレッドが見せてくれたポケモンは、ミュウの写真だった。

「…………」
「なんか、禿げたコラッタみたいだけど」

ちょっと、それはあんまりにも両方に失礼過ぎる。
はぁ、と息を吐いて図鑑を閉じる。こいつ運よすぎ、いきなりミュウとエンカウントかよ。

「それな、伝説のポケモン」
「伝説」
「おとぎ話にあるだろ、三匹のポケモンの話。ああいう奴だ」
「……サンダーとかファイヤーとかのこと?」
「ああ」

へぇ、と閉じた図鑑を再度開けてレッドがミュウの写真をまじまじと見つめる。伝説、とまた呟いてつつ、と画面をなぞって微笑む。

「伝説に会えたなんて、今日の僕は運がいいみたい」

フシギダネを貰ったし、先いっちゃったと思ったグリーンにも会えた。
上機嫌でそう言って、レッドはいそいそと図鑑をリュックに仕舞う。ちょっと深呼吸したと思ったら、突き付けられたのは足元のフシギダネのボール。もう一度、勝負しようよグリーン。期待にきらきら光る赤い瞳が、俺の事をじっと見つめる。

「……いーよ。受けてたってやろうじゃねーか」
「やった」

フシギダネとツルでタッチしたレッドが戦闘体制に入る。俺もヒトカゲを出してそれに対抗する。出るなり相手に威嚇を始め、俺の命令を待っているヒトカゲに向かって俺は高らかに指示を叫んだ。

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