佐助成り代わり22


うつらうつら、師匠が帰ってきた音がした。瞼を開けずに目を覚ます。真っ暗闇の中で一人。

「お前、一昨日の朝から丸一日。酒しか口にしていないと聞いたんだが」
「…………」

一昨日?そうだっけ。腹一杯食べたような気がする。傷なくなってたし。
師匠のその言葉とともに布団から抱きあげられて、膝の上に乗せられる。ぼんやりと薄く目を開けると、飲めるか、と水の入った杯を口につけられて僅かに傾けられる。中に入ってきた冷たい液体を、飲み込まずにそのままにしてたらぐいと口を閉じられて無理矢理上を向かされた。ごくりと喉が鳴る。

「飲んだな?」

は、といきを吐いたら確認のためか指で口を開かされた。それに誰かの指を思い出してぞわりと背中が逆立って、気持ち悪くなる。びく、と痙攣し始めた体を師匠が押さえつけて胸のあたりを叩く。うわ、やだ。やめてくださいそこは触らないで、

「落ちつけ佐助。ゆっくり息を吸って吐け」
「…ぅ……ぅあ、は…」

げほげほと咳き込んだのを宥めるような叩き方、心臓のリズム。体中をぞわぞわと這う不快感に喉を掻きむしりたくなった。痕跡を消そう、おやなんで爪がないんだ?あ、剥がされたからか。

じわり、指をくるむ包帯ににじんだ血の赤は真田の色の赤揃え。白い肌によく映える赤。その言葉を思い出して下腹部と殴られた腹と胃が痛くなってそこで思いきりシャッターを降ろすように急に瞼が勝手に閉じた。それで、これならようやくしっかり寝れるかもしれないと思って私は意志ではどうにもならない流れに身を任せた。強制シャットダウンだ。あ、師匠の慌てたような声が遠くから聞こえる。なんでそんなに慌てているんだろうか。

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