佐助成り代わり20


くたりと糸が切れたように師匠に体がもたれ掛かる。この子は引き取っていきます、と師匠がちょっと恐い声で言った。契約違反、契約違反。なにそれ?忍長が師匠に頭を下げて、師匠が立ち上がる。ふらふらと揺れる包帯まみれの手を優しく握られてゆっくり師匠の顔を見ると帰るぞ、と言われた。

「お前は一度、休まなくてはならない」

そーなのか。
頭が重さで後ろに傾くのにあわせて頷いたつもりだったけどそうじゃなかったみたいだ。師匠の腕から、床に落ちそうになる所を忍長に支えられて、腕の中に戻される。礼をいって見上げたつもりが、悲しそうな顔をされて頭を撫でられただけだった。この人たちの行動はよくわからない。

「では」
「ああ…………、佐助」

帰ろうとした師匠が、わざわざ立ち止まってくれた。体が動かなかったのでそのまま話を聞く。

「……弁丸は、…………いや、すまない。行ってくれ」

師匠は何も答えずに外に出た。ししょうらしくないな……。瞬きの仕方を忘れて目をあけたまんまにしているとそれに気付いた師匠がそっと目を閉じてくれた。暗闇だ、暗闇。この世界は暗闇、光なんてなんにもなくて希望もなくて。もう頑張るなんて言葉を聞きたくないぐらい奮闘しなきゃ、生きていけないに違いない。死にたくないんだけど、生きるって酷く疲れるなぁ……。

prev next

[back]