佐助成り代わり14


ぱかり、目を開けると知っている天井だった。与えられた忍び小屋だ。弁丸様の警護で忙しかったから来たのは一回だけだったけど、それでもこの内装は覚えている。なんでこんなところに。弁丸様と、才蔵は、どうなったんだろう。まぁ私が生きていると言うことは助かったんだろうが。

「…………」

むくりと身を起こす。もう毒の影響はこれっぽっちもない、気分も寧ろいままでになく爽快。いつもより具合がいい。ばきぼきと肩を鳴らして伸びをする。したあとに背中を切られていた事を思い出して一瞬動きが止まる。恐る恐る背中に手をやっていつの間にか着物に着替えさせられていたことに気付き、それから背中の傷が薄く、ただの線でしかその痕跡を残していないことに首をひねる。一応包帯は巻かれていたが………おかしいな、そんなに長い間床についていたかんじはしないんだけど。

「起きたか佐助」
「才蔵、何がどうなっている。弁丸様は」
「無事だ、それよりお前………」
「………?」

何か言いたげに口を動かした才蔵をみて首をかしげる。私が、どうかしたのだろうか。

「………いや、詳しくは長から聞いた方がいいだろう。今お前を起こして来いと言われたんだ、昌幸さまの所へ向かえ」
「了解………このままでいいのか」
「いいんじゃないか?何も言われていないし、お前の忍び装束はもう使い物にならない」
「………そうか」

ならばこのまま向かおう。
布団から身を起こした私を見て、才蔵が眉を寄せた。だからさっきからなんなんだお前は。

「傷は痛まないのか?」
「全く、俺は何日寝ていた」
「まだ半日だよ」
「………半日?」
「ああ……まだ夕方だ」
「そうか」

この不思議現象は、多分あの黒が関係しているに違いない。
そう判断してすたすた才蔵の脇を通り抜けて昌幸さまがいらっしゃる一室へと向かう。一体何の話をされるのか、それが少し怖かった。弁丸様が襲われたのは不祥事と言えば不祥事だから、私は罰せられてもおかしくないのだ。

「………」

きゅう、と震える拳を握る。ああでもどうか、甘い事を言っているのは分かっている。どうかわたしを殺さないでくれたら、いいのだけれど。

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