佐助成り代わり13


あの幼い体に刃物が突き立てられそうになる。駄目だ、彼はまだそんな痛みを知らなくてもいいだろう。いいはずだ。
全てがスローモーションになって、目の前が真っ赤になる。全てが赤い。視界が血の赤に染まる。誰も知らない体の奥の奥で、ぞるりと黒い何かが激情と共に蠢く。

「べんまるさまっ!!」

自分でも驚く速さで体が動き、弁丸様に刃物が届く前にその小さな体を抱き締める。死なない、と言う約束は守れないかもしれないなとやけに冷静な頭でそう考えながら、なにも痛いものは届かないようにと私はその体で彼の盾となった。

「、ぐっ!」
「さすけ!」

背中を袈裟斬りに切られて、その衝撃がもろに骨に響いた。内蔵も揺れて、それに耐えられずに思わず声を漏らす。また視界が赤くなって、奥で黒が蠢いた。先程より近くにその存在を感じる。出せ、出せと訴えるような黒のもやもやとした動きに、ああそんなら出してやろうじゃないかと思った。お前の好きにすればいい。

「あ、ぁぁぁあああ!!」

それに応えて奥から競り上がってきた熱い何かが、私の体を焼いた。あまりの衝撃に暗くなっていく意識の中で何故か、才蔵と弁丸様だけはだめだと強く思って。そしてすぐに意識が途切れる。
その後の事は、私はしらない。

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