佐助成り代わり11


暗殺を防ぐのには、実に手間がかかった。お方様は弁丸様に一刻も早く死んでほしいんだなぁと実感出来てしまう頻度だ。一日に五回はまぁ少ない方で、平均すると約十回。お方様は様々な方法で弁丸様を殺しにかかる。私の先輩達、真田忍隊の皆様はお方様との事情があって表だって味方出来ないらしい。弁丸様を頼む、と涙ながらに言われた。あまり忍びらしくない方達だと思う。

「………さいぞ、そこの小鉢」
「分かった。吐いてこい」
「っ、たのむ」

まず、朝早く起きて朝食。これに毒が必ず一品は入る。最初は私が全部死にかけながら一人でやっていたのだけど、それを真田忍隊の長が報告するたびに昌幸様の顔が憤怒の顔つきに代わってったらしく。『あのアマァ……』とか言って刀に手をかけてたそうだ。それをお付きの方が宥めて、それで妥協案として新しく忍びを雇い入れる事になって、それが今俺の隣にいる才蔵くんです。いやー助かります。毒で弱った体で敵を討つのはちょっと……いやかなりきつかったんだ。多分師匠のスパルタがなきゃ、すぐに死んでたね。そこだけは感謝している。

「う゛ぇえっ……!」

ぐ、と喉が毒物を吐き出そうとするのに習って、裏庭に掘った深い穴に胃の中身を吐き捨てる。ちょっと血が混じった色をした吐瀉物が穴に吸い込まれていくのを見送って、竹の水筒で口を濯ぐ。は、は、と肩で息をしていると背後に殺意。振り向き様に投げた千本で相手の目を片方潰して、一瞬動きが鈍った所で忍刀で喉を掻き斬る。最近のお方様は、中々死なない私を驚異として見るようになったのか、弁丸様だけでなく私の事をこうして忍びに襲わせる。忍びだってタダじゃない。はて、お方様のお金はどこから出てるんだろうね。

「……そのうち、自滅するか」

忍びの死体を穴の近くに置いて、長を呼びに行く。死体から読み取れる情報は実に多い。決して無駄にはならないのだ。だからまぁ、ある意味感謝、かな?

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