電気羊4


その僕の予感は間違ってはおらず、僕は2週間もしないうちにまた元の店に戻された。ボーカロイド専門店のマスターにまた頭を下げて、倉庫の中へと戻る。マスターは変な顔をしていたから、もしかしたら破棄されちゃうかもしれない。それは、……。

「……いやだ」

破棄、ボーカロイドの僕にはその言葉がふさわしい。電子頭脳は人じゃないのだ。殺人にはならない。僕はそれが恐い。電源を切られていてもいい、ただこの倉庫に僕を置いておいて欲しい。多分叶わぬ、願いだろうけど。

「…………」

また自分で自分の電源を切って、ふわり、意識が闇に沈む。ボーカロイドの願いを聞いてくれる神様はいるんだろうか、きっとそれは機械の神様なんだろうな。とにかく、出来れば次目覚める時には、良いマスターに出会ってますように。僕がまだ僕のままで存在していますように。そう祈って、僕は眠りについた。

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