電気羊2


ぷしゅん。間抜けな排気音ともに意識がぼんやりと覚醒する。瞼をゆっくりあけると目の前には新しいマスター。後ろには僕らの仲間、ミクとリンとレンと、あとそれからがくっぽいどとか言う最近発売された新しいボーカロイドがいた。今度のマスターは随分とお金持ちなようだ。

「カイト。俺がお前の新しいマスターだぞ」
「はいマスター。よろしくお願いします」
「ああ」

にこにこ笑う新しいマスターは、起動したばかりの僕の手を引っ張って録音室へと向かった。初期化されたばかりの電子声帯が落ち着くまでもう少し待ってほしいなぁ、なんて思いながらそれに大人しくついていく。僕らはマスターに逆らえない、そういうチップが頭の中に組み込まれている。

「さぁ、調節するぞ。暫くそこで待っていろ。用意するから」
「…はい、マスター」

部屋につくなり僕の手を離して、がさごそと器械を弄り始めるマスターを、手持ちぶさたにぼんやりと見つめる。ああ、きっとこの人も、僕を好きに歌わせちゃくれないんだろう。

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