シャチ2


それから、人外になったからって何もせずに死にたいわけではなかったので私は頑張った。頑張ったと言っても本能に身を任せれば大したことは無かった。私は危険が迫ったときだけ頭を働かせて動けば良かった。それも、シャチの敵は同族以外はあまりいないので年に2、3回あればいいほうだった。あとは本能に身を任せ、魚や鯨の身を喰う日々。うむむ、頭の中が錆び付きそう。なにかいい刺激はないものか。

きゃおおと鳴いて私を呼んでいる仲間の声を無視して、深海からどんどん上に上がってゆく。上には美味しい獲物があまりいないからみんな中々やってこない。まぁシャチにとって綺麗な風景なんてどうでもいいものナンバーワンだからしょうがないか。

「ぎぃー………」

ぶくくと口から泡をはいて、それが海面へと上がっていくのを見送る。初めて見たときはあれほど美しいと感じたこの光景も、今となっては至極どうでもいいものになってしまった。はぁ、寿命や戦いで死ぬ前に退屈で死にそうだ。

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