シャチ3


だから仕方なく泡でぷくぷく遊ぶ私の上に、ふ、と影がさした。なんだなんだと見上げるとそこにあったのは大きな木。そこから生えて動いてる変な木、あ、あれボートとオールか。もしや人か。

随分原始的だなぁと思いながら、ぷくぷくまた泡を吐く。船底に当たってぱちんと弾けるのを観察していたその瞬間、水の中に響く同族の声。エモノ!?おい違うぞ馬鹿!

喜びの声をあげながら弾丸のようにボートに向かって襲いかかる群れの雄を止めようと急いで体を動かすも、残念ながらそれは一足遅かった。鈍い音と共に大破したボートと頭にたんこぶをつくり目を回した馬鹿。木屑や木材がばらばらと海の底に落ちていく中で、私は必死にもがきながら沈んでいく小さな人の手を見た。

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