「おまえの身を護れ。それが一番」
愛はあるけどスカ、言葉攻め。





 そろそろ、帰さねーとな。

 ある日坂田が呟いた。

「寂しい?」
「……そりゃ、な」
「帰っても一緒に住むか」

 それもいい、と本気で思ったが、

「チャイナはどうすんだ」
「あー……、まあ、放り出すわけにゃァいかねーか」
「当たり前だ」

 じゃあ、俺が屯所を出よう。
 ひとり暮らしができないわけもなし、通いで仕事すればいい。
 そこに、坂田がくればもっといい。

「万事屋の近くによ」
「神楽が入り浸っちまう」

 むっ、と口と一緒にへそも曲げてしまった坂田は、しばらく口を利かなかった。
 俺が初めてチャイナ娘のことを知ったときと、まるで同じ反応なのが可笑しかった。

 夜には自然と肌を合わせた。
 相変わらず無茶はされたけれど、それが嬉しかった。
 この男の性癖を満たせるのが、俺であることが嬉しくて、気絶するまで抱かれた。

 今日は坂田に、口で奉仕だ。

「もう少し、おクチ開けてみな?」
「ん、んむ、むぁ、」
「そうそう。上手くなったな」

 そっと髪に指を差し込まれ、梳かれる心地よさに身を任せていると、いつの間にか頭を股間に引き寄せられているのだ。

「んぐっ! ごほっ」
「んー、ここが限界か」
「ごめ……」
「いいよ。苦しかった?」
「ううん。手が、気持ちよかった」
「そっか。嬉しい」

 坂田のイイところをたくさん覚えた。
 坂田のが大きくなると、自分の舌使いを誉められたみたいでますますしゃぶりつきたくなる。

「さから……おいひい、」
「俺も、キモチイイ、」
「もっろ、ほひい」
「っは、飲むか? ぶっ掛けて欲しいか」
「ろまへて」

「ションベンだけど。出すぞ?」

 一滴だって残さない。
 この体から出たものを、溢したくない

「ほんとに飲んじゃったの? ヘンターイ」

 酷薄な笑みを浮かべて坂田は俺の躯を引き寄せる。
 乳首を親指で転がしながら背骨に沿って指を滑らせる。

「はっ、あー……ッ、」
「乳首腫れてんの。見ろよ」
「あっ、あーっ! おっきく、なってる……」
「こんなとこで感じんの? いやらしいね土方くんは」
「んあっ、だっ、て」
「だって、なーに? 誰にでもこんなことさせちゃうんだもんね、キモチイイよね」
「ちが、ちがう……も、させないっ、からぁ」
「消毒。唾つけとこ」
「あ、あ、ぁーーーっ!! それダメ、それやぁーーー!」
「らんれ?」
「キモチからぁーー! キモチの、おかしくなるーー!」
「なれよ。見ててやる」
「ひィアァァァアァァ!? ぎんとき、ぎんときーーーッ!!!?」
「こっちも、イイだろ」
「あっ、だめーーー!! そこッ、だめ」
「は? イイ、もっとしての間違いだろッ」
「あ、はァァアぁあぁぁ!? 出る出るッ、でる〜〜〜ッ!?」

「銀時、お漏らしさせてって言ってみな」

「ぎんろきぃーーっ、お、おもらひっおもらひひたいッ、らさせて」
「何出したいって?」
「おひっこぉ……」
「そんだけかよ。我慢しな」
「やっ、やら、も、でう」
「淫乱。小便だけでいいのか? こっちは?」
「アーーッ、あな、だめーーーッ!!!?」
「出す。全部見せろ」
「アッ、ァ、はーーッ!? ぎんときーーー!!」

「十四郎。可愛いよ」

 下半身からいろいろな物が垂れていくのを感じながら、坂田の……銀時の囁きを聞くのは、至福の刻だった。
 もう、なんにもいらない。
 真選組さえも。






 そうして、坂田の腕の中で微睡んでいたのに。

「おい。メールじゃねえ、電話だ」

 坂田が携帯を押しつけてきたのだ。
 幸せな気だるさを堪能していた俺は、たぶん声にそれが出ていたんだと思う。

『トシ。無事だろうな』

 着歴を、よく見ていなかった。

「あ……、悪い。長いこと留守にして」
『そんなことはいい。無事なんだろうな?』
「え……?」
『万事屋に、なんかされてねえか?』
「!?」
『気づいてやらなくてごめんな。おまえ、ずっと万事屋に、』
「……だれが、そんなこと、」
『詳しいことは後だ。今そっちに総悟が向かってる。悪いがそれまでの辛抱だ、万事屋を引き付けてくれ』
「それ、どういうことだ」
『大丈夫だ、トシにもう辛い思いはさせない。もう少しの辛抱だから』
「違う、そんなんじゃない!」
『わかってる。そこにアイツがいんだろ? 言わなくていい。待っててくれ』
「ほんとに、違うんだ!」


 電話は切れていた。


「お迎え?」

 坂田は緩い笑みを浮かべていた。
 目には、感情を表に出さないための、あの薄い膜が、

「いいよ。わかってた」
「なにが、」
「おまえは俺なんかの手に、届かないって」
「なんかって、なんだよ……」
「俺と乳繰り合ってたなんてバレたら表通り歩けなくなるぜ? そりゃ不味いだろ、いろいろと」
「なんて……?」
「どうやらそこまではバレてるらしいな。なら、そーゆうことにしよ」
「……っ、は?」
「俺はおまえを監禁、強姦した。変態プレイを強要してな。だからおまえは被害者で、俺たちは憎みあってる」
「……いや、だ」
「そうしろ。いや、そうだったんだ」
「嘘つけ!! 少なくとも俺はッ、」



「おまえの身を護れ。それが一番」

 頬に大きな手のひらが触れる
 強引に重なる唇
 肩に着せ掛けられる隊服

「おまえが幸せなら、俺はそれでいい」



 パトカーのサイレンが周りを取り囲んでいる。

 わかるか、坂田。
 相手の幸せが願える奴は、人を愛せるんだ。
 おまえは何にも恥じることはない。
 俺の、大切な、

「逃げろ。後は何とかする」

 坂田は目を丸くした。

「それと、忘れるな……おまえがいなかったら、俺は幸せなんかじゃない」

 もう一度、坂田は緩く微笑んだ。
 そして、


「さよなら、土方くん」


 闇に消えた。





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