3 「この男にとっては、初めての体験なのか」 *未遂行為あり。 するすると、着物が肩を滑り落ちた。 坂田の着物がごわごわする。 でもそれを言い出すのは恥ずかしくて、したいようにさせておくと、 「どうした?」 「え……、」 「なに? どこ触ってほしい?」 胸に唇を寄せて、囁いた。 「ちが……んっ、」 「ここ? 違った?」 「ちがわ……な、あんっ」 「よかった」 ほっと吐いた息が胸にかかり、それにも反応してしまう。 「あ、それ……、さかた、」 「ん? 痛い?」 「んんっ、もっとほし……」 「いいの?」 なんだか勝手が違う。 もっと酷くしてくれて、いいのに。 前みたいに。 でも、そんなこと言えない、 「あーーッ!! いっ、」 「痛かった!? ごめんっ」 「あッ、やめんなぁ……」 「おい、我慢すんな」 「ちがう、してないッ」 「……気持ちイイか?」 そんなこと、言えない。 坂田の服を掴んで見せるくらいしか。 「なんだ? ひじかた」 坂田が、優しく問いかける。 「言ってみな。いろいろ手はあんだから心配すんな」 「ぅ……、」 「ん?」 「これ……ッ」 同じ動作しかできない。 他にどうすればいいんだ、 「それは、ダメだ」 やっとわかったらしい坂田はゆるゆると首を振った。 「肌なんか合わせたら、俺ァ」 「いいッ、いいからこれっ、」 「〜〜〜っ、ホントおまえ、俺のこと好きな」 「すき、だから……し、しんぱい、すんな」 なに言ってんだ、 わけわかんねえ、早く否定しないと、 「おまえよりっ、もっと前、から……すきだっ、た」 「ひじかた……」 「だからッ、すきに、していい」 坂田の体が伸し掛ってきて、息ができないほど抱き締められて、 「なんだこれ」 坂田は震えている。 「なんで……!? 何されっかわかんねーぞ? 死ぬかもしんねーのにっ、」 「……ぅ、」 「そんでもいいとか、おまえどんだけ……ッ」 うっすらと考えた。 何をしてもいい、と、 どれほどの失敗や、罪を重ねても、 決して心が離れることはないと、 誰もこの男に教えてやらなかったのか。 酷くすることを許されるのは、この男にとっては、初めての体験なのか。 「さか……」 苦しいよ。 俺はおまえがすきだ、 ずっと、 なにがあっても、 「ぎん……き、」 くるしい。 いきが、とまる、 まあ、いいか ぎんとき、おまえにだきしめられてしぬなら、 「土方ッ、おい!? ひじかた!!」 ぎんとき。 しんぱいするな、おれはおまえが、すきだ 「とおしろォォォォォ!!」 章一覧へ TOPへ |