3 「銀さんの前で小便するのが恥ずかしいってか?」 *尿道拷問、放尿強要。 久しぶりの街だった。 江戸に比べれば田舎、というより、天人の文明に慣れた身には原始的とも思える町並みを、俺は見物しながら歩いた。 途中、使えそうなものを物色するのは、もちろん忘れなかった。 帰ると土方はうつ伏せていた。 少し焦ったけど、物音を聞いてぼんやり首を持ち上げたのを見て安心した。死んじゃいない。ただ、全裸なのを隠そうとした結果のようだ。 「おら。とりあえず、水分摂れ」 ペットボトルを投げつけると、受け止め損ねて顔を強打した。 「オイオイ、顔に傷つけたら帰るのが遅くなんぞ? 俺はいいけど、オメーは困んじゃねーの」 「……」 「さっさと飲めよ。んで、風呂だ」 ぶっちゃけ俺は水風呂に入るくらいなら風呂なんぞ入んないほうを取る。近所をそれなりに偵察したが、人の気配はなかった。 ドラム缶風呂くらいはできそうだ。 土方がもたもた飲み食いしてる間、俺ものんびり風呂を沸かそう。 「あン? オメー、脱水で死にてえの」 土方は手をつけかねている。 まあ薬盛られた後だし、しょうがねえか。 「あのな、未開封なのは開けりゃわかる。注射器なんかで細工したかもって疑うならよーく調べろ。んな面倒なこと、せんわ」 「……疑ってねえ」 「じゃあさっさと飲めよ」 「……」 「まだなんかあんの?」 「厠……」 そう言って、土方は俯いた。 「なに。銀さんの前で小便すんのが恥ずかしいってか」 「……」 「なに言ってんだか。糞まで漏らしたくせによ」 「……」 「つか、男に躯売ってたじゃん。や、金払って抱いてもらってたじゃん。そっちは恥ずかしくねえわけ? さすがビッチは違うわ」 「……っ、」 「俺は迷惑なの。テメーに倒れられちゃ。わかる? さっさと飲んで出すモン出せや」 「っ、違うん……」 「無理矢理突っ込まれてえか」 びくっ、と土方は身動ぎした。 パリパリッとキャップの千切れる音がして、中味が白い喉を通って行った。 飲み終えて、ぶるっと身震いする。 「あれ? もう出そうとか?」 「違うッ、何でもない!」 「そうかぁ? この辺押してみよっか」 「やめろ!」 「ごっめーん、手が滑ったわ」 「やめろッ、やだ、さ、わんな……おね、が」 まただ。 怯え方がおかしい。 艦の中でもそうだった。 「おめ、なんかされただろ」 断定してやると、ポロポロと大粒の涙を零して震え出した。 「高杉だからなぁ。ま、いろいろヤりたがるだろうけどな。言ってみ? 何された? 見たとこ尿道裂かれちゃいねーみたいだけど」 「さ、く……?」 「そ。アイツも相当なビッチちゃんだからよ。性的な拷問はお手のモンなわけ。ちんこ縦に真っ二つにされた奴もいたよ」 「……」 「それよりゃマシだろ。機能してんだから」 ぽかん、と俺の顔を見つめ、自分の涙に気づいてないのか拭いもせず、土方は何度か瞬きした。 そして、口を二度、三度と開く。 掠れた声がやっと捻り出された。 「尿道に、管……入れられて、」 「うん」 「さき、に……ふくろが、つ、ついてて、」 「ああ、医療用のカテーテルな」 「くだで……おく、突かれた」 「何の奥?」 「おれの……、ち、ちん、」 「男だろーが。ちんこくらいはっきり言えや」 「かってに、でちまって……しょんべんもらしたって、せめられて」 「うん」 「もとに、も、もどしてやるって……ふくろから、ぎゃくりゅう……、」 あー、エグイことしてんなあ、相変わらず。 放出した体液は温度が下がるから、注入されたら非常に違和感がある。 俺も興味本位でやってみたことあるけど、気持ち悪かった。 排泄物を身体に戻すわけだから、毒素が上手く排泄できなくて下手したら死ぬ。 脅されたかと聞けば、案の定頷いた。 「そんで? 結局どうしたの」 「だしてやるって、たかすぎ、が」 「落ち着けよ。高杉いねえよ、もう」 「くださしたまま、にぎって……」 「あー、痛てえよなアレ」 「……っ、ふ、ぅぐ」 痛みが強烈すぎて染み付いてしまった、というところか。 この誇り高い男が最大の敵の前で恥部を晒し、いいように弄られて絶叫する様が目に浮かぶ。 「じゃ、どうすんの。一生ションベンしねえつもりかよ」 「ッ、ひぐっ、う、」 「ったく、ベソベソしやがって。来い」 土方の腕を引いた。 「小便しろよ。俺の目の前で」 章一覧へ TOPへ |