「じゃあな。ひとりで楽しむなよ」
放置・軟禁プレイ






「されてねえッ!」

 土方がやっと口を利いた。素っ裸で淫行の痕をくっきりつけて。みっともなく震えて。

「けどッイヤだ、たのむっ、から……」

 必死に隠そうとする態度で、隠し事がバレてる。
 そんなことに、思いも至らないのか。




 震えて、呼吸すら危うくなった土方を苛むのは面白くもない。

 その場は諦めて、風呂を切り上げた。
 いろんな液体に塗れた隊服を着せるべきか迷っていたら、横から黙ってジャケットを取られた。

「んなもん、テメーを守りゃしねえよ。ヤられちまいましたって宣伝してるようなモンだぜ」
「その……通り、だから」

 さっきよりは落ち着いたみたいだ。まだ身体は震えて、呼吸もしづらそうだけど。

「俺の貸そうか」
「汚し、ちまう、し」

 俯き、目を伏せてそっと答える土方を、またぶっ壊したい衝動に駆られる。

「坂田。もう出立するゆえ、いらぬことをするな」

 河上が止めに来なかったら、またぞろ俺はやらかしてたに違いない。


 地上に下ろされ、あとは知らぬと放り出されて俺ははたと困った。
 ひとりなら何食わぬ顔で万事屋に帰ればいい。
 だがこの土方を屯所前に放り投げて、隊士どもの好奇の目に晒すのは面白くない。

 こんな土方は俺だけが知っていればいいのだ。


「しばらく、ふたりで暮らすか」

 その間どうしてくれよう。
 なんて不穏なことを考えてたにもかかわらず、土方はほんの少し、ホッとしたような顔をした。

「少なくともレイプの跡は、消してから帰ったほうがいいんじゃねーの」
「……そう、だな」

 今度は顔を強ばらせて、ぎこちなく答える。
 俺のひと言ひと言に、こんなに反応する土方が面白くてならない。
 まだまだ楽しめそうだ。

 俺は江戸からかなり離れた隠れ家を使うことにした。
 ヅラが昔使ってて、放棄したところだ。土方に知られちゃマズイから、目隠しして放り込んだ。

「なーんかさ、ヤローの精液臭えんだわ。その服、脱いでくんない」

 誇りの象徴である隊服をこき下ろす。実際洗わなければ使い物にならないから、さっさと脱がして洗ってやらなければならない。
 土方は思った通り、唇を噛んだものの、言われた通り服を脱ぎ捨てた。
 水は好きなだけ出るが、ガスが通ってるわけじゃない。当分は水風呂だし、それはあんまり快適ではない。

「風呂ンとき洗うわ。それまで裸でいいだろ」

 だったらそのときまで着せておけばいいんだが、さっさと脱がせたかったのかもしれない。
 土方もそこに気づいたようで、一瞬言い返そうとしたが、黙った。

「当面、生活にいるモン買ってくらァ。それまで適当にしてな」

 ああそうだ。外に出られると厄介だ。隊服なんて、いらねえんじゃねーか。

「なあ、レイプされたときの服なんて、見たくねーんじゃねえの?」
「……」
「燃やしちまう?」
「!」
「買ってきてやんよ。着る物」
「……」
「な?」

「そんなことしなくても、逃げやしねえ」

 目を背けて、土方は答えた。

「ここにいるから、行けよ」

 見透かされたようで気分が悪い。
 逃げる? とんでもない。
 これからこの男と、ゆっくり過ごそうっていうときに、逃がしてたまるか。

「あっそ。じゃ、刀は預かるわ。妙な気起こされても寝覚め悪ィし」

 有無を言わさず刀を取り上げて腰に差した。

「じゃあな。ひとりで楽しむなよ」

 また土方は、ぐっ、と唇を噛んだ。





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