埋められた外堀

『…僕は精市の身体を借りてるだけだよ』

「へぇ…なら憑依ってわけ。てことは精市って精神的に弱いんだ。メンタルが弱いとかなんでテニスやってるのかしら」

『お前に精市の何がわかる。何も知らないくせにほざくなよ』

キッと睨めば、妹はケラケラと笑った。
何がおかしい。

「アハハッ!アンタ必死すぎ!そんなに精市が大切?大好きなわけ」

『……あぁ。精市は僕の大切なパートナーだ。大好きかどうかは別として、大切な人にはかわりない』

僕がそう言えば、妹は目を細める。
そして、いやらしく口角を吊り上げた。

「ふぅん。でも憑依って結局は憑依したやつは消えちゃうんだよ。そんなに大切なものになっちゃっていいのかな?依存したら最後、悲しい思いをするのはアンタ自身だけど」

『へぇ。そうなんだ。あぁ、だから力が弱まってたんだね。でも、一時でも精市の役にたてればそれでいい』

─"っ、そんな事を思っていたのか咲哉"─

精市が何か言っているが、無視をする。

『って事で、アンタには消えてもらいたいんだよね。精市の為に。精市がアンタの事嫌いで、存在を消したいみたいだから』

「嫌よ」

即答ですか。
まっわかってたけど。
でも消えてもらう。
僕はどうなっても構わない。

『消えてもらうから。もう神様に頼んでるし』

「なんですって?」

『当たり前でしょ?僕が君に名乗った時点で気づけよ。バーカ』

そう。僕は憑依する前に頼んでおいた。
その名の通り、神様に。
「僕の馬鹿な妹を消すのに力をかしてください」と。
神様は快く頷いてくれた。
僕が呼べばいつでも来てくれる、と。

『因みに、こんなものをばらまかせてもらったよ』

妹に動画を見せれば、サァァアと顔から血の気が引いていく。
僕はクスリと笑い、そんな妹を見下して、言う。

『自業自得だね。ってことで、消えてもらうから。神様、お願いします』

僕がそう言えば、大きな光が降ってきた。
精市も、妹も吃驚している。
光に驚いたのはその2人だけじゃなく、外にいるレギュラー全員が部室に入ってきた。






神様

(咲哉、待ちわびたぞ)

(7/10)

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