埋められていく外堀

『取り敢えず、初めましてとでも言っておこうか』

僕がそう言えば、2人はやっぱりかと言いたそうな顔をした。
なーんか少し悔しいなぁ。

『僕は霧雨咲哉。何故か精市に憑依しちゃった正真正銘女子。あぁ、この身体じゃ説得力ないか』

「俺は信じるぜよ。なんか女子っぽいと思う事が多々あったからの」

『へぇ、柳は?』

もう違う人物だとわかってしまった以上、蓮二と呼ぶ必要はないだろう。

「ふむ、何となくだが気が付いていた」

『そ。あぁ、あの女子。白って奴の苗字言ってみなよ』

「…霧雨じゃな」

「と言うことはまさか」

2人が顔を見合わし、僕をまじまじと見つめる。

『そのまさかだよ。因みに僕の姿を想像するのは勝手だけど、妹とは似てないから』

「……そか」

「ふむ、了承した」

2人共想像しようとしてたのか。
まぁ別にいいけど。
僕と妹は父違いの姉妹だから似てないのは当たり前だし。

『あぁ、僕は妹が嫌いだよ。だから僕は、俺は、霧雨白を潰す』

僕はそう言って足を組む。
そうすれば、仁王はニヤリと笑い、柳はフッと笑った。

『だからさ、僕の妹撲滅に手を貸してくれない?』

「面白そうじゃな。その話乗ったぜよ」

「俺も協力しよう」

その返事に僕は精市の顔に似合わない笑みを浮かべる。

『じゃあこれ、放課後にレギュラー全員に回して』

僕は仁王の携帯にに1つの動画を送る。

「なんじゃ、これは」

『妹がファンにレギュラーの私物を渡す瞬間だよ。勿論、音声入りでね』

「用意周到だな」

『当然でしょ』

さぁて、これからが一番楽しい時間だ。
まぁ僕にとってはだけど、妹にとっては地獄だろう。

本当に楽しみだな。

─"咲哉楽しそうだね"

"そりゃ、僕の大嫌いな妹を排除出来るんだから、楽しいに決まってる"

"そりゃそうか。本当、咲哉はいい性格してるよ"

"お褒めいただき光栄です"

"ふふっ、頼りにしてる"─

僕は期待を裏切らないよ。
絶対楽しくて愉快な舞台にしてあげる。
テニス部を掻き乱した罪を悔いるような、そんな舞台に。








舞い散る

(どれほど美しい華でも)
(いつかは散り、枯れる運命にあるでしょう?)



(5/10)

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