元凶と形状

僕の妹は愛されたがりだ。
常に愛されていないと生きていけない、そんな娘だった。
多分今も。

反対に僕は何に関しても無関心だ。
恋愛も、友情も、他人からの評価も、何もかもがどうでもいいことだった。

今思えば全く正反対の姉妹だ。

少し話が逸れたが、僕の妹は幼い頃から甘やかされすぎた。
欲しいものは買い与えられ、たっぷりと愛情を注がれて育った彼女はいつの間にか歪んでしまっていた。
自分の両親を手にかけるほどに。

僕はそれを黙って見ているだけだった。勿論自分に害がないよう最善をつくした。
何故かは簡単な話だ。
面白かったから、ただそれだけ。
妹が歪んでいく様を笑いながら見ていた。
性悪?
うん、知ってる。これが僕だもの。

まぁ雑談はこれくらいにしとおいて、今はテニス部の練習中のハズなんだけど、一部を除くレギュラー達は何をしているのかな?
いや、僕の妹を愛でているのはわかるけど、部活中にやることじゃないよね。
ふふっ、皆どうしてやろうか。

─"精市、どうする?"

"取り敢えず部活をさせようか。王者が泣くよ、このままじゃ。技術や体力的に、ね"

"りょーかい。じゃ、逆ハー補整を解きにかかろうか。僕には絶対効かないし"

"お願いするよ"

"大丈夫大丈夫。駄目な妹を躾るのも姉の役目だしね"─

僕はクスリと笑ってコートに入る。
そして僕に、精市に気が付かないレギュラー達に向かいパンッと手を叩く。
勿論、音を盛大に出すように叩いたから、皆がビクッと肩を震わせ、こっちを向いた。

『皆、今からランニング行くよ』







「「「ハァァァア!!?」」」

説明が終わった後、皆の叫び声が響く。

「ちょ、幸村君、今何て言った?」

『え?だから、立海の周りを3周走るって言ってるだけだよ』

「いや、その次ッス」

『ん?あぁ、15分以内に3周出来なかったら柳と乾作、ジンジャーエールを飲んでもらうってとこ?』

首を傾げながら言えば、

「可愛い仕草じゃけど、言動は鬼畜じゃ」

…可愛いのか?
仁王の言葉に首を傾げつつも、僕は笑って言い放つ。

『王者立海、これぐらいの事が出来なくてどうするの。それとも、関東大会のように負けるわけかい?俺は嫌だよ』

周りを見渡せば皆が目を潤ませていた。
何故かは知らないけど。

「幸村君、俺やるぜぃ!!」

『は?あぁ、やる気になってくれれば嬉しいよ。じゃっ、始めようか』

僕は妹を、妹の存在自体を無視し続ける。
僕には僕の、信じるモノがあるからね。






この"仲間の絆"は壊させない

(絶対に、ね)



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