全ての始まり

「俺」が男かと聞かれれば「僕」は即答するだろう。否と。
では「俺」が女かと聞かれれば、これも否と答える事が出来る。
ようはどちらでもないのだ。
そう、"どちらでもない"

正確に言うのならば「俺」は生物学上では"男"で、精神的には"女"というのが正しい表現かもしれない。
だが、そんな簡単な一言では済まないのが事実であり、現実だ。
実際問題、"オカマ"や"ニューハーフ"、"性同一性障害"とは全く違う。

ここまで言えば察しのいい人は気づくだろう。
あぁ、分からない人には一生かかっても分からないんだろうが。

分からない人の為に説明しておこう。
俺は、いや、僕は女だった。
大型車から子猫を守り、死んだ。
そのはずだった。

だけど、何故か神様のいきな計らいで、憑依してしまった。
しかも、その人物が「テニスの王子様」という漫画の主要キャラ…つってもラスボス的な存在になってしまったんだ。
本当の"幸村精市"に頼まれてね。
必死に頼む精市に負け、今に至る。

でも今ではこうなってしまって凄く良かったと思う。
だって僕が幸村精市になることで、いや、なる前に生まれた歪みを潰す事が出来るんだから。

『ふっ、今日もご苦労な事だね。勘違いの逆ハー希望主さん』

教室の窓から見える風景につい言葉がでてしまった。
この身になったからか、ソイツの異端さに気づく事が出来た。
いや、この身にならなくても気がついただろう。
なんたってソイツは、

1年前に行方不明になったはずの、

"僕"の妹だったのだから。





プロローグ

(まぁ家族の情なんてものあの子に対して持ち合わせてないけどね)
(僕が薄情なわけじゃない)
(先に裏切ったのはアイツだ)



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