「一度しか教えないから、しっかり見てて」
「はい!先生!」
綱吉が元気に手を挙げる。
「わお。いいね、それ。これからもそう呼んでくれない?」
「うるせぇぞ雲雀。一発で覚えてやるから早くしろ」
「なに?嫉妬?」
するとなぜか二人が喧嘩腰になった。
「ああ、もう!いいからやりましょうよ!!」
まさかノリで発言したそれで喧嘩に発展するとは思ってもいなかった綱吉は、慌てて仲裁に入りながら、話を反らすように用紙を掴んで二人にはい!と手渡と、
「スカイキング、作りましょ!」
自分の手元にも用紙を準備してニコニコと必死に笑う。
そんな綱吉の様子に、二人は仕方ないと一時休戦を視線で告げ合い、ひとまず紙飛行機作りに取り掛かった。
それから小一時間ほど。
スカイキングは直ぐにマスターした二人だが、しかしノーマル同士では勝負がつまらないとリボーンが改良を加え始め、それを見て綱吉たちがさらにああじゃないかこうじゃないかと次々と新しい形の飛行機を作りだしたものだから、気がつけば室内は紙飛行機だらけになっていた。
だが夢中になって作製している四人にはそれが見えていないようで、
「なにやってるんですか、あんたたち」
本日何度目かの来訪者がそれを見て呆れた声を上げた所でようやく我に返った。
「あ、骸だ」
なんとも間抜けな声で綱吉が来訪者の名を呼ぶ。
「ええ、僕です」
呆れた顔で室内に入ってきたのはやはり綱吉の守護者である六道骸だ。
「今ね、皆で紙飛行機作ってるんだ」
「そんなのは見れば分かります」
部屋の惨状を指されて確かにと頷けば、骸はそのままツカツカと室内に入ってきた。
それを見て雲雀があからさまな殺気を向けるが、骸は珍しく殺る気を見せずにはぁと息を吐き出す。
「なんだい?用がないなら出ていってくれない?」
空気が汚れるから息を吐くなと追い払うように雲雀がついにトンファーを構えるが、骸はそんな雲雀には見向きもせず真っ直ぐに綱吉を見つめた。
「何?骸も紙飛行機作りたいの?」
視線に気づいた綱吉が用紙を差し出しながら呑気に骸へ問う。
すると骸はまたまた盛大に息を吐いた。
いったい何なんだと首を傾げれば、
「僕は別に紙飛行機に興味はありません」
きっぱり言い切られる。
「そう」
残念。この楽しさが分からないとは…
「ただ…」
「ただ?」
だが話はそこで終わりではないらしく、骸はまた口を開くのだが、ひとことずつ言葉を切ってはそこでまたフッと息を吐くものだから、弱冠イライラが増してくる。
そしてそれは綱吉だけではないようで。
なかなか本題に入らない骸に次第にリボーンもイライラとしてきたらしくスッと懐に手を入れて何かを構えた。
すると獄寺も徐にタバコを吸い出す。
雲雀はトンファーを構え直し、軽くその場でジャンプを始めた。
まずい。殺る気だ…
俄に物騒な雰囲気が漂い始めた室内で、綱吉はどうしようかなと迷いながらも念のために手袋を手に掴んだ。
敵意を一斉に受けた骸はしかし怯む事なく落ち着いた様子で笑みを浮かべる。
「ただ、あなた方にどうしても伝えたい事がありましてね」
「だから、なに?」
少しキレ気味に綱吉が早く言えと促せば、骸はようやくと言った様子で綱吉たちが作った紙飛行機を指差した。
「あなた方がさっきからせっせと紙飛行機にしているその用紙。重要書類だって事に気づいてます?」
「え?」
「……」
全員の視線が骸から一斉に己の手元にも移る。
ああ、そう言えばもう途中から手当たり次第に用紙を紙飛行機にしていたような気が…しないでもない…
「…判子が押されてるみてぇだな」
「予算数字もあるみたいだよ」
「血判も見えます…」
「あわわわわ…」
うん。間違いない。それはさっきまで綱吉が処理していた重要書類の束だ…
「さて、と。僕は見回りに戻るよ」
青くなる綱吉を他所に、雲雀は突然そう言うとクルリと踵を返した。
「え?どこの見回りに?」
邸内の見回りは守護者の仕事ではない。
このまま逃げる気だと悟り綱吉は慌てて雲雀の手を掴もうとするが、直前でするりと避けられる。
そして、
「俺も昼寝の時間だからもう行くぞ」
「お前、さっき昼寝したよね?!」
「そう言えば俺も見張りの交代に…」
「どこの見張り!?」
さらにリボーンが、そして獄寺が、それぞれに適当な理由をつけてスタスタと部屋を後にしようとした。
「ではボンゴレ、僕も失礼します」
骸はと言えば、心底楽しそうな笑みを浮かべたまま、軽い足取りで綱吉にさっさと背を向ける。
「え…?えええ?!」
そうしてあっという間に全員がダッシュで逃げて行き、室内には綱吉だけが大量の紙飛行機と共に取り残された。
「ええええええ?!!!?」
ひとりになった室内に、窓から再び風が忍び込み、紙飛行機と化した無数の書類たちを巻き込んで踊り出す。
ついでにそこに綱吉の悲鳴も一緒に乗せて、まるであざ笑うようにしばらくヒラヒラと舞いを踊ると、そのまま何事も無かったように過ぎ去って行った…

「れ…連帯責任だろこれぇええ!!」

綱吉がイクスグローブをはめて八つ当たり同然にリボーンたちを追いかけ暴れだすのはこの数分後の事。

皆様、仕事中の息抜きは、どうか程々に。


(終)



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