少しと言っていたが、その少しとはいったいどのくらいなんだろうか…
(ダメ…か。仕事…戻ろうかな…)
外出先からいつ戻るのか分からないリボーンを、このままの状態でいつまでも待つわけにはいかないだろう。
(…でもな…)
頭ではそれが分かっているのに、体が言うことを聞かない。
だいたい、仕事に戻るにしてもこんな中途半端なままでは戻るに戻れない。
(どうしよう…)
あとどのくらい待てばリボーンは帰ってくるだろうか。
それとも、何とかこの熱を下げる方法を探した方が早いのか…
熱が冷めるのが先か、それともリボーンが戻ってくるのが先か…
「ふぁ…、んっ」
ゆるゆるとまた自身を弄りながら煮え切らない熱を弄ぶ。
進む事も戻る事もできなくなった状態で、綱吉はしばらくただ横たわっていた。
そうしてなかなか冷めない熱にうかされる事数分。
不意に、ドアの前に人の気配を感じた。
(あ、そう言えば鍵かけてない…)
どうしようかと考え事をしながら入ってきた為、鍵も何もかけていない。
まぁ、こんな事をする為に部屋に戻ってきた訳では無いのだから当然か。
鍵が開いてるなら、外の相手は出入りが自由だ。
こんな姿を見られる訳にはいかないと、頭では分かっている。
分かっているのに、けれどなぜか焦りはしなかった。
むしろ気持ちはやっと来たとばかりに期待に満ちる。
そこに感じる気配は、綱吉の待ちわびていた気配だったから。
「おい、何勝手に仕事さぼってんだ」
ノックもせずに文句を言いながら鍵のかかっていないドアを開け、勢いよく中に入って来たのは他の誰でもない。リボーンだ。
この熱をどうにかしてくれと呼んでいたリボーンだ。
「んんっ」
綱吉はリボーンの問いに返事もせずに、ゆっくりと熱を持った体を起こした。
下着を脱いで明らかに情事の途中である姿をリボーンの前に晒けだす。
そうして乞うように両手をリボーンに伸ばせば、リボーンは珍しく驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
「リ…ボ…」
固まっているリボーンにどうしたのかと首を傾げ、辛い息を殺しながら名前を呼んだ。
すると今度は無表情のまま、リボーンはツカツカとこちらに早足で近づいてくる。
一瞬、怒っているのかと思った。
その顔が酷く硬直しているように見えたからだ。
けど、すぐに違うと分かった。
近づいてきたリボーンは乱暴に自分のジャケットを脱ぎ捨てるとネクタイも外してそのまま綱吉を抱き寄せ噛みつくように唇を奪う。
そうして性急に綱吉の下肢に指を這わせ、尻を力強く掴まれた。
「んくっ!」
あまりの強さに体が跳ねてリボーンに唇を奪われたままの状態で声を上げる。
けど、そのいつもより余裕の無い乱暴な態度こそが、怒っているのでは無く興奮によるものなのだと綱吉は気がついた。
吸われる唇の痛さや、いつもよりいやらしいリボーンの手付きがさらに興奮を煽る。
これが本当に怒っている時なら、ただ乱暴なだけで、こんなふうに求めてくるような触り方はしない。
「リボーン…、あっ、ちょっ…」
それでも、普段には無いあまりの性急さに、綱吉は戸惑った。
綱吉よりも長い指は容赦なく綱吉の自身を追い立て射精を促しながら、後口を丹念に撫で回す。
「ふあっ、あっ…イっちゃう…」
どうにか落ち着きたくて、一度動きを止めてくれと綱吉はようやく離れた唇でリボーンに静止を求めるが、リボーンは止まらない。
無言のまま、次には綱吉のシャツのボタンを引きちぎるようにして脱がし裸に剥いた。
「…誘えとは言ったが、まさか煽ってくるとは思わなかったぞ」
そうして、シャツの下から現れたまだ触れてもいないのに堅く尖っている乳首に噛みついた所でようやくリボーンが口を開く。
「煽ってなんか…」
「煽っただろうが…。俺の理性を外した責任、取ってくれるんだろうな?」
そう言うと、やっといつもの余裕を少しは取り戻したのか、ニヤリと口端を上げて笑い、自分のスラックスの下で膨張し堅くなったソレを綱吉に押し付けてきた。
「堅い…」
「もうガチガチだぞ?」
グイグイと押し付けらるソレに、ドキリと胸が騒いだ。
ずっと待ちわびていた期待感がますます高まってゾクゾクと身を震わせる。
けれどその前に、リボーンの責任と言う言葉に反応して言い返した。
「責任…、それ取るのはリボーンの方だ…」
ムッとした表情になって、リボーンの頭を引き寄せる。
そうだ。こうなった責任をとるのは自分ではない。リボーンの方だ。
「は?俺のせいだと?」
「そうだよ、全部リボーンが悪いんだ」
こんなふうに煽るような態度になったのも、体がこんなに熱いのも、リボーンが欲しくてたまらないのも、けっきょく仕事をさぼっちゃったのも全部。
「俺の体をこんなにした責任、リボーンが取ってよ」
満足するまで、リボーンが欲しいんだ。
引き寄せた顔に唇を寄せ、耳元でそう囁けば、
「最高の誘い文句だな」
途端にまた余裕を無くしたような顔になってリボーンがにぃと笑った。
「もっと誘ってみろ。俺が欲しいって言え」
興奮した雄が目の前にいる。
でもきっと、それは綱吉も同じだ。
「リボーンが欲しいよ…。今すぐ、奥まで犯して…?」
後から考えたら、きっと恥ずかしくてどうにかなりそうな台詞。
でも今なら…。
今だけは、言いたくて。
リボーンが聞きたいって言うなら、それでもっと理性を無くしてくれるなら。
(俺の誘い文句でリボーンの理性が外れるなんて、最高に愛されてる証拠じゃん…)
悦びの衝動のままにリボーンの唇へ噛みついた。
「…して?」
さっきは絶対に言えないと思ってた誘い文句。
それを聞いたリボーンの顔が一瞬何かを堪えるように歪む。
ギュッと目を閉じ、けれど次に目を開けた瞬間にはもう豹変していた。
本能が剥き出しになった獣のように、リボーンは綱吉の肩に食らいつく。
加減もなく噛まれて綱吉は悲鳴を上げるが、リボーンは気にせず噛み痕を残した。
その痛み方から鬱血しているだろう事は見なくともわかる。
これはしばらく歯形と共に痕は消えないだろう。
それを考えたら、普段ならばどうしようかと困る所なのに、なぜだろう、今日はゾクゾクと悦びが体を満たした。
同時に自分ばかりがリボーンに支配されているような気がして、ならばと綱吉は噛みつかれる痛みを背に爪を立ててやることで仕返しに変えた。
ギリリと力一杯爪を立てたおかげでリボーンの顔が痛みに歪む。
その顔を見ていい気分になるが、それは束の間の優越感にしか過ぎない。
爪を立てた仕返しだとばかりにリボーンは撫でていた秘部にいきなり指を捻り入れ、そのまま猛った熱塊も一緒に突き射れてきた。
「ひっ!いっ…たい!!」
待ちわびていたとは言え、いきなりこんな乱暴に中に射れられたのでは堪らない。
「やぁ!もっ、と、ゆっくり…」
痛みによっていやいやと綱吉が首を振る。
それでもリボーンは締め付ける中を無視して指で入口を拡げながらさらに奥へと肉塊を埋め込んできた。
「わりぃな、ゆっくりは出来そうにねぇ」
自分もきついのだろう、苦しい息を吐きながらそれでも綱吉の中を支配していく。
無理に開かれる体に綱吉の目からは涙が溢れだすが、リボーンの肉に慣れている体は無理矢理にも関わらず次第に喜んでリボーンの熱塊をぎゅうぎゅうと締め付け出した。
「はっ…、ツナ、少し力抜け」
「できなっ…、あっ」
お互いに荒い息を吐きながら奥へ奥へと突かれ、いったいどこまで入ってくるのだろうと少し怖くなる。
「や、だ、これ以上は…」
無理だ。こんなに深く受け入れた事はない。
そう思うのに、リボーンはまだ行けると綱吉の腰を持ち上げ押し込むように腰を打ち付けた。
身体中が汗だくになって、リボーンから滴り落ちてくる汗がポタリと綱吉の体に落ちるそれにさえ感じて。
(欲に溺れるって、こんな感じの事かな?)
どこか遠くでそんな事を考えながら、けれど深く埋まったそれが中で好き勝手に動き始めればもう思考も何もかもが全て掻き回されて、ただただ高い嬌声を上げるだけになる。
急な挿入に少し萎えかけていた自身も、次第に快感を拾って再び持ち上がりタラタラと液を溢した。
「イきたい…、リボーン、イきたい…」
自分ひとりで弄っていた時はなかなか襲ってこなかった射精感がやっと訪れて、早くイきたいと体が震える。
「いいぞ、我慢しねぇで何度でもイけ。空になるまで絞ってやる」
「やだ、死んじゃう…」
「お前となら腹上死でも俺は全然かまわねぇけどな」
「ばかぁ…」
冗談を言い合っている間にもリボーンの手が追い上げるように中心を擦り、中を犯すピストン運動も激しくなった。
「あっ、出して…リボーンも出して…」
「いいぞ、一緒に出してやるからイけ」
グリグリと先端を爪先で引っ掛かれ、それを合図にしたように綱吉が自分の腹にタップリと白濁をぶちまければ、それを見たリボーンが奥に突き入れながら綱吉の中を満たすようにまたタップリの白濁を吐き出した。
外も内も熱い液にまみれ、けれど二人の昂りはまだ堅くそそり立ったままで萎える気配は無い。
「まだイけるな?」
「当然…じゃん…」
荒い呼吸で答える。
強がりじゃない。
だってまだまだ終わる気は無い。
もっと乱れて、もっと欲に溺れて…
「もっと、俺をリボーンの肉で犯して…?」
「お前の誘い文句は、殺し文句だな」
ククッとリボーンが実に楽しそうに笑った。
誘えとは言ったが、実際に誘う綱吉がこんなに淫らだとは想像もしていなかった。
これは嬉しい誤算だ。
「もっと見せろ。乱れて見せろ」
「リボーンももっと、乱れてみせてよ?」
中に肉棒を挿したまま体を曲げてキスを交わした。
そのまま再び動き出す熱を、綱吉は愛しく愛しく包み込む。


ああ、もっと。もっと…
二人でもっと気持ちよくなろう。
そのためなら少しくらい恥ずかしくても、何だってしてあげる。
ただし、気分が乗った時だけだけど…

それでも…

ねぇ?たまには全部の自制を取り払って、欲に溺れて乱れよう?

囁いた綱吉の誘いに、リボーンの答えは当然の、イエス。


(終)



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