「誘い文句は時に殺し文句になるんだと知った」




たまにはお前の方から誘ってみろと、リボーンに突然そんな事を言われて頭を抱えた。
(誘うって、いったい何を言えばいいわけ?)
一向に進まない書類を前にしてもうどのくらいの時間がたったろうか。
事の始まりは今朝の会話。
昨夜のリボーンの強引な誘いに文句を言っていれば、
「そうでもしないとお前恥ずかしがってなかなかヤらせてくれねぇじゃねぇか」
なんて呆れたように言われたものだから、ついついそんな事は無い!と、きらなくてもいい見栄をきってしまい、だったらお前から誘ってみろと言う話になった。
別にするのは嫌いじゃないし、むしろ触れていていいなら一日中触れていたいと思っている。
でもそんな事は言えない。
何より恥ずかしいし、それに今までは綱吉の方から言い出さなくともリボーンが全て見透かして昨晩みたいに少し強引に誘ってくれていたから、綱吉の方から誘う必要などなかった。
強引過ぎるなんて文句を言ってはいるが、もちろんそれが本音ではない。
むしろ本音とすれば、恥ずかしくて言えない自分には、その強引さがありがたいと思っているくらいだ。
それを分かっていながら、リボーンは敢えて挑発してきたのだろう。
(なんで今更俺から誘わなきゃならないんだよ…)
これは明らかに故意だ。
絶対に遊ばれていると思う。
それが分かっていてもついムキになって「いいよ」なんて言ってしまった自分が怨めしい。
そんな後悔で頭を抱え直していた時だった。
「おい、ツナ。ちょっと出かけてくるぞ」
突然部屋に入ってきたリボーンにビクリと体が跳ねた。
「え?あ、う、うん」
ちょうどリボーンの事を考えていた所にその本人がやってくれば、どうしたって過剰に反応してしまう。
そんな綱吉を見てリボーンはニヤリと笑うと、「楽しみにしてるからな」と念を押すように言い置いてそのまま部屋を出て行ってしまった。
「リボーンの奴め…」
このやろう…と声にださずに悪態をつく。
この状況をとても楽しんでいるリボーンに殺意を覚えそうだ。
とは言え、ここまで来たらやらないわけには行かないだろう。
リボーンの事だ。きっと綱吉から誘われるまで待つ気でいるに違いない。
それはそれで、きっと綱吉の方が我慢できそうにない。
「ああ…どうしよう…」
なんとしても誘い文句を今夜までに考えておかなくては。
「でもなぁ、ストレートにやろうなんて言えないしな…」
試しに想像してみた。
男らしくリボーンの真似をして、「やろうぜ」と誘う自分…
「いや、駄目だ、これは無い」
それはまるで自分のキャラじゃない。
そして絶対に出来ないと確信している。
そんなん出来たら苦労しない。
「とすると…アレか?」
いわゆる誘い受け…。上目遣いで「…して?」とかおねだりしてみるとか…
「いや!無理!!」
むしろまだ「やろうぜ」の方が言える。
「ううう…」
もう仕事どころではない。いや、さっきから全く進んではいないのだが…
「ちょっと休憩しよう…」
ずっと考え事をしていたせいで頭の回転がいつも以上に悪い。
ここは一度リセットしようと綱吉は立ち上がると、自室に少し戻ると獄寺に連絡をして執務室を後にした。
それでもやっぱり考えてしまうのは誘い文句のことばかりだ。
「そう言えばリボーンはいつも何て言って誘ってくれてたっけ…」
部屋のドアを開け、ネクタイを緩めながらベッドにダイブした。
昨夜の始める前の事を思い出そうと目を閉じる。
確か、風呂から上がったらリボーンがベッドにいて、何となくもうそんな雰囲気をかもしだしていたけれど、敢えてそれには気づかないふりをして「きてたんだ」なんて返して。
備え付けの小さな冷蔵庫から水を取り出して飲んでいると手招きをされた。
「なんだよ?」なんて分かってるくせにそう言いながら近寄れば腕を取られて引き寄せられる。
どのくらいベッドで待っていたのか少し冷たくなっている体に抱き締められ、けれども風呂上りの体にはそれも心地よくてされるがままに身を任せた。
「いいだろ?」
抱き締められたまま、耳元に直に囁かれる言葉。
何を?なんてもう言えない。
体は、期待にどんどん昂っている。
「って、ちょっ、ストップ!ストップ!」
そこまで思い出した所で思考を慌てて止めた。
危ない。体が妙な熱を持ち初めている。
記憶につられて、なんだかそんな気分になってきたようだ。
「嘘だろ…」
なんとか静めようと身を縮めて落ち着こうとするが、一度スイッチの入った体はなかなか静まる気配は無い。
それどころか、どんどん昨日の行為を思い出してしまって体がふるりと震えた。
体を撫でるリボーンの手。
うなじを舐められ、噛みつかれた痺れ。
指で潰すように弄られた乳首は、触ってもいないのに堅く尖ってシャツを押し上げた。
下肢に集まる熱を逃がす事も出来ずに昂っていく。
熱くなるそこを、リボーンはいつも躊躇う事なく口に含んで、その時の熱さと快楽を思い出すと、下着がジワリと濡れてしまった。
(どうしよう…、どうしよう!)
止められない。
手が自然と、昨日のリボーンが辿った後を追っていく。
中心を口に含まれながら、溢れて零れた液と枕元にいつの間にか常備されていたローションで濡らした指が後口に触れる。
途端に、ひくひくとそこが切なく締まった。
「んんっ」
さすがにこれ以上は我慢しなければとシーツを噛んで耐えてみようとしても、目の奥にはリボーンのあの昂った大きな肉塊が焼き付いていて離れない。
「あっ、あ…」
あの肉塊が、自分の中に入ってくる瞬間のたまらない幸福感。
「だ…め」
震える体を抱き締めて腕に爪を立てるが、それさえも甘い痺れに変わる。
これではまるで好き者だ。
(ああ、もう!これも全部リボーンのせいだ!!)
抑えられなくなった気持ちの行き先を、リボーンにぶつける。
だってそうだろう?
体がどうしようもなくリボーンを欲するのは、全部リボーンが綱吉に仕込んだ事だ。
(だいたい、あいつは存在自体が卑猥なんだよ…)
あのフェロモン垂れ流しの目。
唇や、全身から漂う色気。
そんな男に開発されて、触れるだけで快楽を感じる体にされてしまった。
(そうだ、全部リボーンが悪いんだ!)
悪態をつきながら、知らず溢れていた涙を拭った。
もうこうなったら絶対に責任をとらせてやる…!
自分をこんなにした代償を、リボーンの体で償ってもらうしかない。
決めると同時に綱吉はスラックスのベルトを外しファスナーを下ろした。
仕事の合間にちょっと抜けてきただけだとか、あまり帰りが遅いと獄寺に心配をかけるだとか、まだ日中の日の高い時間だとか、どこかでまだ冷静な自分の突っ込みが聞こえてきたけれど、
(責任は全部リボーンに押し付けてやる!)
全てに目を閉じてスラックスごと下着を脱いでしまうと、そっと自身に触れた。
「ふっ、あっ…」
あの手を思い出しながら両手で自身を包み込み、それからギュッと握りしめる。
さっきまで思い出していた記憶のおかげで既に溢れ出している液を指に絡めながら全体に塗りつけて滑りやすくすると、ゆっくりと上下に扱いた。
ぬちゅりとねばついた水音が耳を犯す。
その音に煽られるようにして少し早めに擦りながら扱けば、自身は喜んでさらに堅くなり天を仰いだ。
腹につくほど育ったそれは今にも爆発してしまいそうだが、どんなに早く手を動かしても、少し痛いくらいに握りしめても、そこは先端がひくひくと虚しく震えてトロトロと液を溢すばかりで、一向に爆発の気配をみせない。
「んんっ」
体はイきたくて硬直している。
決定的な刺激が欲しいと求めている。
分かってる。
自分の体はもう、ここを弄られたくらいじゃ簡単にイけない体にされた。
そんな体にしたのも、全部リボーンだ。
さっきから前を弄るたびに他の場所が切なく喘いでいる事に綱吉も気づいている。
そっちだけでなく、こちらにも触れろと存在を主張している場所。
「はっ…」
乱れた息を吐き出しながら、濡れてびしゃびしゃになった手をそっと尻に回した。
片方は前を弄ったまま、もう片方を先程から疼いてたまらなくなっているそこに伸ばしていく。
息を詰ながら手を伸ばし、ひくひくと動いているソコに指先で触れた。
途端に期待を含んだ甘い痺れが脳を刺激して全身を駆け巡る。
もっと欲しいと腰が揺れだし、指先を挿れればソコが喜んで中へと指を飲み込む動きを始めた。
「あっ…欲し…、もっと…」
ゴクリと息を飲み、欲が口を突いた。
欲しい、欲しい、欲しい。
そればかりが頭を廻り、それしか考えられなくなる。
グッと根元まで指を押し込んで中を掻き回すように動かした。
「ふ、あっ…あっ!!」
内壁を弄る気持ちよさに抑える事なく声を上げる。
指を二本、三本と増やしていきながら、出し入れするたびに手についた液と指の隙間から入り込む空気のせいで響く卑猥な音に羞恥を煽られ体が熱くなった。
「もっと…奥…ほし…」
グプグプとリズムをつけながら中を弄り、でも次第に指に慣れてくると物足りなくなってくる。
出来るだけ奥へと指を押し込めようと腰を浮かして受け入れるが、やはり足りない。
そう、欲しいのは指じゃない。
分かってる。
欲しいのはもっと奥まで届く、もっと熱くて大きくて堅い肉だ。
昨日の夜にも散々ここに受け入れたあの肉塊が欲しくて堪らないのだ。
ギリギリまで広げらて、気持ちいい場所を擦られながら奥の奥まで貫かれたい。
「あ…う…」
考えた途端に中が自分の指を締め付け、前が軽く弾けた。
きゅうきゅうと切なく絞まるそこは、あの肉塊に吸い付きたいと騒ぎ立てる。
「リ…ボ…、リボーン…」
手が無意識にケータイを探していた。
今すぐ抱いて欲しい。
今なら、きっと誘える。恥よりも羞恥よりも欲が勝っている今なら、きっと。
そう思ってケータイを探すのに、気持ちが焦ってなかなか見つからない。
スーツのジャケットにはどうも無いらしいと気づいてから、そう言えばスラックスのポケットに入れていた事を思いだした。
さっき脱いだ後にどこにいっただろうかと目で探せば、いつの間にか蹴り落としていたようで、ベッドの下に落ちている。
途端に諦めた。
もう体に力が入らない。
立ち上がるのも面倒だ。
ならばリボーンがここに綱吉を探しにくるのを待たなければならないのだが、そのリボーンは生憎と外に出て行ってしまった事を思い出した。



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