マスクがあるとないとじゃ印象がだいぶ変わる




※『新伝・風の書』、アニナル疾風伝469話の時間軸のお話です。



「敵の最高機密をあばくのだ…!」
「いや、敵っていうか担当上忍ですけど」


はい、どうも。ひょんなことから木ノ葉隠れの里で下忍をしている、寺田あかりです。え?冒頭の会話は一体何だって?そうですよね。突然のことで分かりませんよね。では、説明します。

ここ最近、ショボい任務ばっかだったせいでナルトがカカシ先生に駄々を捏ねたのが始まり。まあ、ナルトの気持ちを分からないでもない。実際、草むしりや迷子のペット探しとかそんな任務ばっかりだったからね。でも、結局軽くあしらわれて今日の任務はその場で解散となった。

が、そこで簡単に諦めるナルトではない。これはアカデミーの頃から悪戯に付き合っていた経験上、絶対に何か企んでいると思ったからだ。すると案の定、自分達でも出来るSランク任務。つまり、カカシ先生の素顔を見る任務を私達に提案してきたのだった。なんというか、毎回諦めないそのド根性に拍手を送りたくなるよ。


「もういい加減、諦めたらそれ?ね!サスケ君!」
「こういう日には、もってこいの任務だ」
「だよねェ〜!(結局、乗っちゃったよね!しゃんなろー!!)」


あ、意外とノリ気なサスケによってサクラが便乗してきた。というか、


「珍しいわね。明日は雪でも降るんじゃないかしら」
「オイそれどーゆー意味だ」


素直に思ったことを言うと、サスケに睨まれた。いや、だっていつもだったらナルトの考える任務や悪戯に乗らないじゃない。なのに、今回はサクラはともかくサスケもノリ気で参加するんだもの。私はいつも面白そうなので付き合うのだが、残りの二人は渋々付き合う。大体、いつもこんな流れなので驚いた。


「でも、どうすんの?今までだって、何やっても上手くいかなかったのに」
「へへ〜ん!オレってば、ちゃーんと考えがあるんだってばよ!」
「あら、明日は雪じゃなくて槍が降ってくるのかしら」
「オイそれどーゆー意味だってばよ」


また素直に思ったことを言うと、今度はナルトに睨まれた。いや、だってねぇ?ナルトが自分で作戦を考えてくるなんて珍しいから、明日は槍でも降るんじゃないだろうかって思うじゃない。

そんな私を他所に、ナルトは自信満々気に作戦を伝えてきた。ナルト曰く、これまでのカカシ先生の写真を見返せば一枚くらいは素顔が写ってるだろうと。それを聞いた私とサクラは、


「自信満々気なところ、非常に申し上げ難いんだけど」
「それ、もう私とあかりで前に調べた。全部マスクしてたわよ」
「えっ!?」


そうなのだ。以前、写真なら写ってると思ってサクラと二人で手分けして調べたんだけど、全部マスクをしていたという結末。調べた後、サクラと愚痴りまくったよ。いや、ホントあれは無駄な時間を過ごしたなと思う他なかった。

なんてあの時のことを思い出していると、背後から「火影様に提出する忍者登録書には、素顔の写真が使われているハズだよ」と声を掛けられた。あれ、この声って……。


「とは言っても、それは里の最高機密扱いの書類。簡単には拝めない代物だけどね」


振り向くと、そこにいたのは茶髪の癖毛に瞼から頬に掛けて紫色のペイント、正面から見て右の口元にホクロがあるイケメンな男性がいた。


「…聞かれたか!」
「(別に聞かれたところで、どうでもいいでしょ!)」
「まあ、白昼堂々とこんな場所で話してたら聞かれて当然よね」
「誰だ?」


各々の感想を述べている中、唯一冷静だったサスケが誰なのかを尋ねると、彼は自分はスケアと名乗った。何でもスクープを求めて西へ東へと旅する写真家だとか。スクープを求めて歩いていた所、私達の話を聞いて自分も一緒に行動してカカシ先生の素顔で大スクープを狙いたいと話しかけて来たらしい。

というか、スケアさんの声めっちゃ総悟君に似てる。あれ?もしかしてご本人?と疑ってしまうくらい似てる。江戸っ子口調だったら完璧だよ。うわあ、これ後ろから呼ばれた時気を付けなきゃ。間違っても総悟君って呼ばないようにしなきゃ。

あと、髪色は違うけど、髪質は銀ちゃんに似てるんだよなぁ。触ったらフワフワしてそう。あ、でも、銀ちゃんのくるフワには負けると思う。あそこまで酷い天パは銀ちゃん以外に見たことないからね。


「ちょっと、あかり?聞いてる?」
「あ、ごめんサクラ。えっと、四六時中未成年の前で18禁のエロ小説読んでるカカシ先生をセクハラで訴える話だっけ?」
「いや、誰もそんな物騒な話なんてしてないってばよ」
「今夜、忍者登録書を見るために火影邸に潜入するって話だろうが。ちゃんと聞いておけ。ウスラトンカチ」


スケアさんの声や髪質について考えていたら、いつの間にか話が進んでいたようだった。あれ、セクハラで訴えるんじゃないのか。残念。でも、潜入ミッションの方が面白そうだから良しとしよう。

あ、夜中に潜入なら夜食とかいるかな?お弁当とかよりも、すぐに食べられる方がいいよね。よし、ここは定番のおにぎりにしよう。冷蔵庫の中に何が入ってたっけ…。


「あかりさんって、カカシさんに何か恨みでもあるんですか?」
「ふへ?」


夜食の献立について考えていると、スケアさんが私に質問をしてきた。突然のことだったので、思わず変な声を出してしまう。うわあ、恥ずかしい。そんな恥ずかしさを誤魔化すために少し咳払いをして、スケアさんの質問に満面の笑みで答える。


「恨みはないですけど、鬱憤はあります」
「え」


私の返答にスケアさんがピシッと固まったようだったが、私は気にせずそのまま語り続ける。


「カカシ先生は、忍者としてはすごい実力の持ち主です。はっきり言って天才です。でも、実際のところ馬鹿なんです。馬鹿と天才は紙一重って聞きますけど、この人ほど当てはまる人はいませんよ。だって、集合する時はいっつも遅刻するし、更にしょうもない言い訳をするいい加減な人で…。というか、言い訳するならもっとマシなこと言ってほしいですよ。正直笑えない。こんな人が木ノ葉随一の上忍だなんて世も末ですよね」

「うわあ、カカシ先生ヒドイ言われようだってばよ」
「あかりってカカシ先生が遅刻する時、いつもニコニコしてるだけだから怒ってないのかと思ってたけど、いろいろと溜まってたのね」
「というか、スケアの奴泣いてないか?」


これまでのカカシ先生に対する鬱憤をぶちまけていると、背後でナルト達が何か言っているのが聞こえた。あのね、私だって鬱憤くらい溜まりますよ。仏じゃないんだから。でも、誤解しないでほしいことが一つだけある。


「でも、私はそんな先生を誇りに思ってます」
「!」


それを伝えると、スケアさんの目が見開いた気がした。けど、それも一瞬のことだったので、気のせいかなぁと少し疑問に思いながら、話を続ける。


「普段は、まあ、ふしだらでいい加減な人ですけど、いざとなったら誰よりも仲間を大切にする優しい人なんです。それも自分を犠牲にしてまで護ろうとするんですよ?確かに実力は私達よりあります。でも、もっと私達を、仲間を頼って欲しいなぁ……なんて思っちゃうんですよね」


少し照れながらカカシ先生に対する不満、というより心配事を伝えると、スケアさんにこれでもかというくらい頭を撫でられた。何故に。


「あーあ、出たってばよ。あかりの天然タラシ」
「あれって無自覚だから怖いのよね」
「一体、何人の被害者を出すつもりなんだ?アイツ」


スケアさんに頭を撫でられていたせいで、背後でナルト達がそんな会話をしているだなんて知る由もなかった。

と、まあ、そんなことがありながらも、私達のSランク任務は始まったのだった。












******











「全く、ナルト達も懲りないよね。というか、あかりなら止めてくれると思ってたのに」
「あら、カカシ先生ったら私を買い被りすぎです。私だってナルト達と同じ下忍ですよ?過ちを起こすことだってあります。それに可愛い子には旅をさせよって言うじゃないですか。あと、面白そうだったんで。つい」
「オイ最後のが本音でしょ」


おっと、思わず本音が漏れてしまった。あ、お気付きの方もいると思いますが、結果から言うとSランク任務は見事失敗に終わりました。失敗した理由を簡潔に説明すると、

あれから忍者登録書を見るために火影邸へ潜入したものの、あと一歩のところで暗部に捕縛され、三代目とカカシ先生にこってりと叱られる始末。この時、スケアさんに罪を擦りつけられそうになったことは一生忘れねェからな。

で、次はスケアさんの持つ連続撮りカメラで食事シーンを写真を撮ることに。が、残念ながらこれも失敗に終わってしまった。というか、何で連続撮りなのに全部口元が隠れるの。サスケの言うように、これは神の力さえ感じられるよ。

その後も第八班、第十班の協力の元、カカシ先生を追い詰めることに成功したのだが、ガイ班に邪魔をされてしまい、敢えなく失敗。しかも、追い詰めたカカシ先生は影分身でしたというオチ。それを見た瞬間、『あ、これカカシ先生最初から知ってたパターンだな』と思いました。あれ、作文?

そんなことを思い出しながら、私はカカシ先生とゆっくり歩く。

あ、因みに今、第七班は今日の任務を終えて帰路を歩いているところです。任務の帰りは大体ナルトとサスケが競って前方を歩き、サスケを追うためにサクラも付いて行く。すると、ゆっくりと歩く私とカカシ先生が必然的に後方になるので、よく二人で話すことが多くなる。

そして、今もその状況なので、この間のSランク任務の話をしていたのだ。すると、カカシ先生が何かを思い出したように「そういや…」と私のことをジッと見つめてきた。


「あかりってナルト達と違って本気でオレの素顔を見ようとしないよね。何で?」
「え」


カカシ先生の言葉に思わず固まってしまった。ま、まさかバレてるとは思わなかった。流石上忍。でも、元一般人の考えなんてバレるに決まってるか。なんて一人で納得した後、カカシ先生の質問になんて答えようか迷う。


「んーっと、理由は二つあります」
「二つ?」
「はい。一つ目は上忍相手に下忍が敵うはずがないからです」
「協力すれば見れるかもしれないのに?」
「いや、見せる気ないだろアンタ」


カカシ先生の言葉に思わずツッコんでしまった。ホントこの人よく言うよ。これまで散々協力して見ようとしたのに、絶対見せないんだもの。今回も結局見せなかったし。結構いいチームワークだったのになぁ。

あ、話が逸れた。えーっと、二つ目の理由。いや、これ理由って言っていいのか分からないけど、言うだけで言ってみるか。


「そもそもカカシ先生って美形じゃないですか」
「…………え?」
「マスクしててもそれが分かってる時点で、外した素顔を見ても『あ、やっぱイケメンだわ』ってただの再確認みたいな感じになると思うんです。だから、別に必死になって見ようとは思わないんですよね。あ、でも、スケアさんにみたいに口元に黒子があったりしたらそれは見たいかも。カカシ先生の綺麗な銀髪と綺麗な顔立ちに黒子があれば、世の女性が黙ってませんよ……って、カカシ先生どうしたんですか?びっくりするぐらい顔が物凄く真っ赤ですよ?熱でもあるんですか?」


二つ目の理由を話している途中にカカシ先生を見たら、ごく僅かしか見えない顔が真っ赤になっていた。慌てて駆け寄ると、両手で顔を覆ってしゃがみ込んだ。うわ、耳まで真っ赤だよ。肩を叩きながら声を掛けても返事がない。ただの屍のようだ。一応、何かブツブツ呟いてるけど小さくて聞こえない。ええ、ホントどうしたのカカシ先生。


「あーあ、まーたやってるってばよ」
「あかりも毎回懲りないわねぇ」
「ある意味、一番の被害者はカカシかもな」


カカシ先生を心配していた私を他所に、前方でナルト達がそんな話をしているだなんて知る由もなかった。

と、まあ、そんな個性的な第七班と一緒に木ノ葉隠れの里で、私は忍者として元気に生きています。あれ?デジャヴ?






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