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感情を出せる時

「お前、すげえなぁ!」

その後、海軍は悔しそうに顔を歪めながら、怪我人を担いで海軍船へと引き上げて行った



「お前、本当に強いんだな!なあなあ、仲間になってくれよー」

「名前は、なんであんなに高いところから飛んで平気だったんだ?」

「んー?あれぐらい、皆できるよ」

ニコニコとはぐらかす名前

気の良いルフィとチョッパーは、こんな様子にも気を悪くすることはない


「いやいや、出来ねぇよ」

ウソップとナミは力一杯に手と首を左右に振る




「俺はできるぞ!」

「ルフィ、あんたも規格外!普通じゃないのよ」


「お前、失礼だなー」

頬を丸く膨らますルフィ



「冗談抜きだ

お前はなにもんだ?あんな動きを見せて、能力者でもねぇ」

ゾロの威圧的な態度に全員が名前に目を向ける





「・・昔、少しだけ耳にしたことがあるわ」

一向に口を開かない名前に代わって、ロビンが口を開いた



「人並み外れた運動能力を持つ種族のこと

・・そう、悪魔の実の能力者じゃないわ


悪魔、悪魔そのものってね」


「悪魔・・?」

「うぇぇぇぇぇ!あ、あ、悪霊たいさーーーん!」



「なに?それ?

悪魔と悪霊って一緒くた?」

ウソップとチョッパー、ナミの掲げる十字架




「お前が悪魔ー?そんなの俺は認めん!」

「おいおい、認める認めないの問題じゃないだろ」



「悪魔って言うのはだな、背中に大きくてカッチョいい羽がはえててだなー、槍みたいな大きな武器を持ってて、頭にこーんな形の角を生やしてるやつのことを言うんだ」


「ルフィ!何てこと言うんだ!

名前ちゃんに、そんな・・悪魔みたいな・・

セクシーだ、セクシーな悪魔だ」





何を想像しているのか考えたくもない

サンジの鼻の下をデレッでれに伸ばしている






「悪魔ねぇー、そーいや、そんな風に呼ぶ人もいたかもねぇ

確かに、私はあんたたちとは種族が違う

でも、良いじゃない!この船には、タヌキだっているみたいだし」

「俺は、トナカイだ!」




「能力者もたくさんいるし、次の島までぐらい乗せてってよ

私、泳げないしー

ま、例え、泳げたとしてもこんな大海原のど真ん中に捨てられれば、死んじゃうけどね」




自分の命運を次の相手の一言が握っていると言うのに、名前の言葉には全くと言っていいほど重みが感じられない




「もっちろんだよ!名前ちゃん!

そうだ!身体を動かしてお腹が空いただろ?

何か食べたいものある?俺が腕を振るって名前ちゃんに旨いものをご馳走しますよ、レディ」


「じゃあねぇ、」


名前は、お茶菓子を要求し、サンジの出した見た目も美しいクッキーを嬉しそうに頬張る



***
**
*




毎日が宴会のような、麦わら一味の夕食

しこたま、食べて呑んで、歌って騒いで




宴会がお開きになったところで、名前は、船室の扉を開けて甲板に出る

潮の匂いが鼻をくすぐる



室内は、暖かかったが海の上の夜は冷える

急な温度差にぶるりと身を震わせた後、船首に向かう




ガチャリと重厚のある金属音がすぐ後ろで聞こえてきた

名前は、ゆっくりと振り返る



そこには、頭にバンダナを巻き月夜に怪しく光る刀を2本、両の手に提げたゾロがいた



「なに?なんの真似?」

「昼間の一件

お前は、素手で海軍を相手にしていたが、本当はお前も剣士だろ

あの、動きの間合いや無意識の打ちに出る構えが、剣士独特のものだった」



ニヤリと笑みを見せ、ゾロは右手の刀を名前に挑戦的に向ける

「俺と戦え」




名前は、ゾロに向けられた刀に目をやり、不愉快に眉間に皺をよせた


好戦的な奴、と怪しく笑い向けられた刀の切っ先を片手でグッと握った名前




想定外の行動にゾロは目を丸くする




握った手からは、全く血が出ない

そして、気付くのが遅れた


自分の手のひらの痛みに



どうなってやがる?俺は、確かに・・





***
**
*



「・・血の臭いだ」


鼻をひくつかせ、チョッパーが低く呟く




「血?」

「あぁ、間違いない!甲板の方からだ!」



「あぁ!?まさか、糞剣士の野郎、名前ちゃんに怪我させたんじゃねぇだろうな!」


チョッパーの甲板からという言葉を皮切りに、名前とゾロを除く船内にいた全クルーが、甲板へと飛び出した


・・・違う、この血の匂いは、ゾロ・・




暗闇の中、ゾロが自分の右手を左の手で押さえ込んでいる

ポタポタと滴る液


そして、どういった経緯なのだろうか

名前が、ゾロの愛刀を構え立っていたが、ルフィ達の姿を確認すると、その手の刀をパッと手放した


ガチャンと荒々しい音をたて、刀はゾロの目の前に落ちた



「一体、何しやがった?」

ゾロは苛立ち、低い声で名前に問うた



「私は、平穏に過ごしたいの

つまらない、あなたの野望に付き合う気も、踏みにじる気もない

そんな、物騒なものを私に向けないで

怪我とか関係なく気が悪い」


そう言って、刀を拾いゾロへと手渡す


やはり、刀の柄を持っていたのは、俺だ

そうして、手を返し自分の手を見ればスッパリと掌が切れている

しかし、傷口は刀傷よりやや切れ味の鈍い凶器の痕のような



そこに、サンジが眉間に皺をよせ、煙草を噴かしながら腕を組み立っていた



「てめぇ、」

「ゾロ!その傷!すぐに手当てしないと!」

「ほっとけ、そのうち塞がる」

「ダメだ!バイ菌が入ったらどーするんだ!」



「ほっとけ、チョッパー

名前ちゃんに、手も足も出なくてふててんだよ」

「あぁん!?てめぇから、やってやろうか!」

「おもしれぇ!」


二人の火花が散り始め、名前は、海へと視線を移した

海は黒く、空との境は見分けが付かない

空一面の星は海面に映って、まるで宇宙にポツリと船だけが取り残されたような、錯覚と孤独感に襲われそうになった



しかし、船上に視線を戻すとまだ言い合いをしているゾロとサンジ

落ちそうになった心が、賑やかな一味に掬い上げられた



フッと笑みを落として、今回の航海はまあまあだったかなと小さく呟いた

その声は誰にも届くことはなかった



暗い水平線の先にポツリポツリと明かりが見える

賑やかそうな島が近づくと同時に、別れの時も近づいてきた





第1章 麦わら海賊団 完 / Next 第2章 海軍大将


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