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スピード解決

目を見張るような速度

立ち上がるや否や、名前は船の甲板を力一杯に蹴り、メドレー中佐目指して飛び出した




メリー号の欄干に足をかけ蹴り出した

ふわりと浮き上がった体は、あっという間に海軍の船へと着地を決める





「名前ちゃん!」

その動きに一同は、全く反応できなかった

サンジは、海兵の船上を駈ける名前に向かって大声を出すが、聞こえているのか、いないのか名前は決して、振り返ることはない




メドレー中佐は、ものすごい速度で走る名前を目で追う

そして、名前がほんの2、3mの距離まで迫ってくると力一杯に拳を甲板に降り下ろした




砕け散った甲板の板

粉々になり、つぶてとなった木の破片が名前に降り注ぐ

咄嗟に名前は、顔を腕で覆って後ろに飛び退いた





間一髪、この言葉がメドレー中佐の脳裏を過ったとき名前が顔を覆った腕を軽く振る

目のほんの数p横を何かが掠めた




視界から名前が消え、ズキッと足が痛み気付けばメドレー中佐は床に臥せっていた

口からは、止めどなく胃の中身が溢れ出す





***
**
*







注意して、見張っていたはずだった

女の居場所、仲間との位置関係





女が突如、一味に手を出そうとしたって対処できるように

海軍が現れて、多少気は逸れたかもしれないが、油断はなかった





だが、ふと気付けば女はいない

気配をどんなに探っても、それらしき気配を感じとることができない

益々、海軍のスパイの線が俺のなかで濃くなった





その時、見張り台に人影が見えた

日差し越しに見える影は、小さく、逆光で表情を読み取ることができない

海軍に向けられた挑発ともとれる宣言





ためらうことなく、見張り台から飛び降りた姿

着地はまるで猫のよう、危なげもなく美しい

しかし、それでいて力強く着地音だけ聞けば、足の骨が砕けないのが不思議なほど




甲板を蹴り、飛び出した女は真っ直ぐに海軍の中佐に向かって





だが、ただで遣られるわけがない

簡単に遣られるような奴が海軍中佐を張れるわけがない





案の定、返り討ちにあったと思った

中佐の振り下ろした腕が飛び散らせた木片を浴び、怯んだ女は、次の一撃で終わりだと思った





だが、女は怯んでなどいなかった

さっと振った手には中佐の飛ばした木片を既に握り、尖った先は中佐の顔を掠めて勢いよく飛んだ





今度は、中佐の方が怯んだ

その隙を衝き、女は、目一杯に左足に体重をかけ踏み込む

踏み込んだ足の下には中佐の右足




無意識下で中佐が引き抜こうとした足

しかし、力一杯に踏みつけられた足を無理に引けば・・




想像に難くない




中佐の顔がしかめられたところから、中佐の右足はきっと骨が砕けただろう

そのままグッと腰を捻り反動をつけて名前の肘が中佐の鳩尾に深く食い込んだ





この流れるような一連の動き


人とはかけ離れている





***
**
*





胃の中身を大方吐き出したところで、気分の悪さは収まり、続いて腹部に痛みを感じ始めた






少し顔をあげれば、仁王立ちする足


ゆっくりと、筋肉の薄いふくらはぎ、太さの変わらない太ももと辿って、顔にまで視線をあげると、まるで俺のことをゴミでも見ているかのように蔑み、見下した名前の瞳があった




「失せな

麦わらの船を沈めるってんなら、その前に私がお前らの船を沈めてやる」





「メドレー中佐!!」





メリー号に乗り込んでいた隊員たちが一瞬にして、床に這いつくばらされた中佐を見て、慌てて海軍の船へと戻ってきていた

その素早さから、メドレー中佐がいかに隊員達から慕われているかが窺える




「この女ー!」

刀を振り上げ、名前に向かおうとした一人の隊員





メドレー中佐の声が船に響きわたる





「やめろっ!

・・刀を納めろ

ここは、引け、引くんだ

お前らの敵う相手じゃない」


「しかしっ!」

「みすみす、殺られるような真似はするな」





中佐の報復にといきり立った隊員達は、やや不服そうにしながらも、収まった




「名前、お前の目的は何だ?」

「ふふっ

言わない、でも、安心して?

海賊に手は貸さない、海軍にも付かない

これは、守ってあげるから」






満面の笑みを見せた名前に、目を奪われる

これほど、女の笑顔を美しいと、恐ろしいと感じたことなどない







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