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絶賛漂流中

あーもう!

だから、嫌いなのよ

海賊なんて!!






***
**
*






遡ること、2日前







今回の航海は、商船で

それなりに大きなこの船には、次の島で取引に使われる食料品がわんさと積んである





これは、ラッキー

美味しいものを腹一杯食べながらの航海は言うことなし






料理長に振る舞われたランチ

ウマウマとご機嫌よく食べた






その後に襲ってくる眠気に抵抗する術なし

ポカポカと陽気の当たる甲板でうたた寝をしていた

どれだけ眠っていたかなんて、まるで分からない







飛び起きたのは、激しい怒声と衣を裂くような悲鳴が聞こえてきたから







慌てて、騒音の震源目指して駆け出した





物陰から覗けば、刀を振り、まるで肉を捌くかのように何の躊躇いも見せず商船の乗組員を切り伏せる海賊


そう、商船のすぐ隣に海賊船が乗り付けてある




この船の2〜3倍もあるような大きな船だ






ゲラゲラと下品な笑い声を上げし指揮を取っているあの男が・・船長・・・

スッと眼を細めて、狙いを定めた



そいつの首を跳ねるのに、ものの数秒で事は済むはずだった







「ま、待ってくれ!!」

冷静さを欠いた声







落ち着いた、正しい判断を下すことが全くできていなかった

腰を抜かし、震える手を上げその男、商船の船長は宣言した





「船は、明け渡す

頼む、殺さないで、み、見逃してくれ

この船にあるものは、全て差し上げる」






耳を疑った

こんな、根性なしを船長になんかしてくれるなよ





襲われて、10分経ってねぇ・・







「賢い判断だ

犠牲者はなるべく少なく、ってな」




自分達の力を認められたこと、その絶対的な服従に気を良くした海賊は、ニヤリと笑い



「良いだろう!今すぐ全員船を降りろ!この船に残ろうとか勝手なことをした奴はその場で切り殺す!!」







お前もそれでいいのか!?

暴れ足りないだろ!?


心の中で文句たらたら






それでも、こうなってしまった以上この船に乗り続けるのは無意味





状況は悪くなる一方だ

見つかれば、そのまま海に投げ出されてしまうし、海賊共の首を落とせば商船の乗組員が人質となり・・・




さっさと見切りをつけて、脱出しようの小舟を一舟拝借してずらかった





***
**
*







海上をゆらゆら早、2日






ここで、冒頭に戻るのだ






だから、海賊なんて嫌い!海賊に襲われるような船も嫌い!

もっと言うなら、海賊船を追っかけ回して、進路が狂いまくる海軍船も最悪!




お腹すいたー

こんなことなら、もっとたくさん食べておけば良かった





小舟で脱出してはみたものの、私に航海術なんてものはない

ただ、ひたすら、ゆらゆら揺られているだけ





航海術、ちゃんと勉強しようかな・・

でも、そんなことしたら、これからの航海は独り

こんな、寂しい独り言を延々と・・・





気分がどんどん落ちてきた





「あー!今なら誰でもいい!

どんな船でもいいから、ヘールプっ!!」





誰もいないのをいいことに、大声を上げてみる






そのことを後悔するのに、時間はかからなかった

ビシビシと音をたてて、船のすぐ横に幅1メートル程の氷が張る







嫌な予感が頭をよぎったとき、気だるそうな、だれきった声が響く




「あーら?そこにいるのは、名前ちゃんかい?」

「う〜わ・・」







キコキコと自転車を氷の上を漕いで渡ってくるのは、海軍大将、アオキジ


眉間に深い皺を刻み、渾身の不愉快な顔を見せ付ける





「あれま〜、そんな顔しないでよ

傷ついちゃうなぁ」





「・・・」





「何?こんなところで、どしたの?

もしかして、迷子?」




「やかましいわ!

漂流中じゃ!なんか文句ある!?」






「急に怒らないでよ、驚いたなぁ」




くそっ!このダラダラとした態度がウザくて、イラつく

しかし、場合が場合だけに、不本意ながらも今このチャンスを逃すと次に誰かが現れるとも限らない





身を裂くような屈辱・・・





「・・・送って、」


「え?なに?聞こえないなぁ」





「乗せてけ!次の島まで!」






「人にものを頼む態度じゃないねぇ

ま、いいや、乗せてってやるよ」





ひとまず、胸を撫で下ろした

今のが私の中の最大限の譲歩




これ以上は、自信ない





「でも、一個だけ聞かせてくれ」

いつもにない、真剣な表情のアオキジ






こんな顔もできるのか、と






「先日、うちの中佐があんたにお世話になったそうだね」

「・・そうだっけか?」




「あんたにコテンパンにやられて泣き寝入りしてるのよ」

「へえ、」




私の心を読む、そんな気配を漂わせ、私を正面から見据えて口を開いた




「あんた、麦わらの船に乗ってたんだって?

なに?海賊にでもなる気でいるのか?」



「まっさかー

でも、海軍にもならないけどね」






「あー、そりゃ残念だ」


ふーっと深く息をつき、アオキジは言う




「まーいーか、ほら、後ろ乗んな」




「・・・」





自分から頼んだが、やはり屈辱

背中合わせに自転車に二人乗り





次の島までの距離が気になるところ・・・







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