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暗闇に笑う女

「いやいや、ちょっと気分が悪いっていうから皆で船まで担いで行こうと思って」

「あぁ、飲み過ぎだな、こりゃ」

「さぁ、早いとこ帰って、俺らも飲み直そうぜ」




さすがは、仲間と言ったところか

何の打ち合わせもせず、話をあわせてごまかしにかかる

だが、こんなときは、決まって余計な提案をする奴がいたもんだ





「おい、なにビビッてんだ

相手は女一人だ

やっちまおうぜ!」



小声で全員に耳打ちする

全員がそっと、声の主を見やる

小柄で細い手足




確かに、腰を退かなければならないような相手とも思えない

なんなら、この女を使って、麦わらを呼び出させるのもありだ



「・・よお、姉ちゃん

俺たちは黒羽海賊団だ

こいつのことが心配か?」


「俺らは、これからこいつを殺すんだ」

「えーっと、理由、理由は、えーっと」


「バカ、そんなのは何だっていいんだよ!顔が気に入らねぇとか適当に言っとけ!」

「そうそう、顔が気に入らねぇから殺すんだ」





なんだか、いまいち締まらない海賊団

こいつら、小物なのね




「ごめんなさい、本当は全部聞こえてたの

麦わらの海賊団って言うのの人質にするんでしょ?」



女は、バカにしたようにクスクス笑いながら話した



「あぁん!嘗めやがってこの女!」

「ねぇ、その海賊団って強いの?」

「そら、強いのなんのって、1億の賞金首と、7000万の賞金首が乗ってるんだぜ、その船」

「へぇ」



「強くねぇ!俺らの方が強いに決まってんだろ!」

「じゃあ、その男、私が貰っていく」

「んな、何言ってやがんだ、バカかてめぇ!」



「嫌なら、力ずくよ」

「嘗めやがって、面しれぇ!返り討ちだ、こら!」




***
**
*




痛む腹、指先一つ動かせない手足に情けなさも一入

足がズルズルと引きずられているところから、おそらく、俺を担いでいるのは俺よりも背が低いのだろう。




あー、こんなチビに担がれて何やってんだ、俺は・・

このまま、海に沈められるのか、

はたまた、黒羽の海賊団の船長に食われる

いやいや、もしくは、人買いに高値で売られちまうんだ





朦朧とする頭で余計なことを懸命に考え続けるウソップ

ネガティブな思考で、ついには、涙までこぼれ落ちる始末




まだまだ、冒険に行きたかった

このまま、海になんて捨てられたくねぇ

助けてくれよぉ

・・いや、助けなんて待ってられねぇ




ウソップがそう、決心したら、あっさりと腕が動いた

相手のウソップを担ぎ上げ、支える腕を振りほどく

しかし、足に自重を支えるほどの力は残されていなかった



懸命に這いつくばった状態で、地面を這うように手足を動かし相手と距離を取ろうとする

しかし、今のウソップの匍匐前進は亀よりも遅い

ウソップの頭上からクスリと笑う女の声




「ま、ここまで来たら帰れるんじゃない?」




その声にハッとする

目の前にはゴーイングメリー号



確かに、ウソップは買い物のために船を出て島の中心街の路地裏へと足を伸ばし、海賊に

追われて反対側の海岸線へと逃げ延び、波止場で追い詰められたのだ





とすると、これは夢だ!

おいおいおい、俺は、死んじまったんだなぁ



ルフィ、すまねぇ

俺は、ここまでみてぇだ




ボロボロと溢れでる涙



***
**
*






メリー号の中はいつまでも帰らぬウソップの心配で重たい雰囲気が漂う




「なぁ、ウソップどこ行ったのかなぁ」

「ねぇ、あんたたち!早くウソップを探しに行きなさいよ!」

「ナミさん、そうは言っても何処に行ったのか検討も付かないんだ」



「チョッパー、お前の鼻で探せねぇのか?」

「無理じゃない?この島、やけに潮の臭いが強いもの」



「あぁ、俺も島を一回りして見たけど、風とか潮とかで、全く分からなかったんだ」

「・・ったく、俺はもう一度、しらみ潰しに探してくるぜ」

「ゾロ!俺も行く!」



「そうよ!ルフィ!しらみ潰しでも何もしないよりもましだもの!

さっさと探しに行ってきなさい!」



「そういう、お前は行かねぇのか!」

「だって、ウソップと一緒だった奴等って黒羽海賊団って!危ないじゃない!」



「んナミすぅあん!君のことは、命に変えてもこの俺が守ってみせるからねぇ!!」

「やってろ、アホ」




最初に船室を出たゾロ、続いてルフィが船室から顔を出す


「・・おいっ、ゾロ、あれっ!」


ルフィが指差す先にはボロ雑巾のようになったウソップ




「ウソップ!」

二人の切羽詰まった声を聞いて、血相を変えて残りの4人も飛び出してくる



「チョッパー!早く治療だ!」

「わ、分かった!」



バタバタと医療具を広げて、診察を始めるチョッパー

「全身打撲と、十数ヵ所の擦過傷!うち、一ヶ所が、くそっ!血が止まらねぇ!」

「チョッパー!!」



「分かってる!黙っててくれ!

ウソップは、何としても俺が助ける!!」



「この血の跡、その海賊団とやらは、俺たちに喧嘩を売ってるみたいだな」




煙草をふかし、小さくこぼしたサンジ

ガチャリと刀を鳴らすゾロの目付きはまるで獣のよう

帽子を目深にかぶり直すルフィ




「チョッパー、ウソップを頼んだぞ!」

「ちょっと、あんたたち!どこへ・・ってまさか!」

「・・相手は一海賊団、頭数は多ければ多いほど良いんじゃない?」




ルフィ、ゾロ、サンジ、ロビンの4人は真っ暗な闇夜に街へと繰り出した




***
**
*



「ああ、あの血にまみれた男かい?ありゃ、もうダメだね

ほとんど虫の息だよ

え?どっちから来たって?

あっちの方だよ、あっちの、そうさねぇ

波止場から来たんじゃあないかねぇ」




「担いでいるのは、こーんな小さいやつじゃよ!

何と力の強い奴じゃと目を疑ったわい!」




人の良さそうな肥太ったオバサンの指差す方に一同は、向かう

年老いたじーさんが視線程度の高さで手を使い、身長を表現してみせた

おおよそ、150センチ




ウソップの敵の海賊団を探して行き着いた波止場




「出てきやがれぇぇぇぇ!!!!」



波止場に響くルフィの声

暗い海辺にもはや、隣にいる仲間の顔すらも認識することができない




「おいっ、ルフィあれを見ろ」




そこには、5人の人相の悪い男がウソップ程ではないにしろ傷だらけで転がっている




「はぁぁぁ、もう!!今度は何事!?」




わざとらしい溜め息と、苛立ちをぶつけるようなヒステリックな声



強い海賊団と聞き、大きな海賊船を想像していた女にとって、メリー号のサイズは拍子抜け

ウソップを助けたのは、全くの無駄であったと船の前にウソップを捨てて、もといた波止場へと戻って来たのだ




他に、船がいないかともといた波止場で船を探しに戻ってきた

あぁ、私は安全に次の島に行きたいだけなのよ!

あんな、ちっさな船なんて、いつ沈むか分かったもんじゃない!




声のする方に一同は目を向ける

高く積み上げられたテトラポッドの上




暗闇の中にぼんやりと浮かぶ灯

立ち上がっている声の主の足が灯りに照らされる

しかし、そこには、一同が予想していた筋肉隆々の逞しい男の足はない

あるのは、待ち針のように細い足で女の足だ




「・・てめぇか、てめぇがウソップをやったのか!?」

「・・・ウソップ?一々、殴った相手の名前なんか知りはしないよ

いたかもしれないし、いないかもしれない」




「なら、顔はどうなんだ

鼻の長い男、そいつはうちの船員だ」



「・・あぁ、鼻の男!

いたいた!あれを船員って呼ぶってことは、あんたらが麦わらの海賊団?」

「あれじゃねぇ、ウソップだ」


「ん?あぁ、でも、大変ねぇ

闘えない海賊の船員って」




カラカラと聞こえる笑い声

ルフィも怒りの頂点




「大変なんかじゃねぇ!

力は、弱くても、ウソップは俺の大切な仲間だ!」


「そう、じゃあ、首に縄でもかけて人にボコられないようにでもすれば?」

「ぶっ飛ばしてやる!」

「ルフィ、相手は女性だ」



「おい、ラブコック、余計な口出しすんなら船に帰れ

こいつは、男とか、女とか関係ねぇ

仲間を一人やられたんだ、ここで黙って引き下がれば、ウソップだって報われやしねぇ」


「・・・ふんっ」



バキバキと拳をならしルフィが動き出す



「うちの船員に手を出したこと、覚悟しやがれ!」




踏み込み、遠くから放ったルフィの拳はぐんと伸びて、まともに女にヒットした

後ろ向きに吹っ飛んだ女の体

その後、何かがぶつかる嫌な音




「てめぇだって、弱いじゃねぇか

ウソップを笑うな!」




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