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謝罪と交渉


「ルフィーーー!」

「んナミすぅあん!寂しくなって俺の後を追いかけてきた?それとも、俺が心配だったのかな?

心配には及ばないよ!俺は君を残して倒れたりなんか・・ 」



「ルフィ!・・はぁはぁ

こいつら、こいつらがウソップを」



指差したのは、倒れた5人の男




「そいつらは、知らん!!」

「やったのは、女だったみたいだぜ」


「・・女、違うのよ

女じゃないのよ」



「おちついて、航海士さん

何があったの?」




「ウソップ、目を覚ましたのよ

そんで、男5人にやられたんだ、って

それで、この波止場で意識が飛んで気付いたら担がれてメリー号の前に」



息を整えながら、ナミは訴え続ける




「その時、女の声が!

ここまで来たら帰れるって

女がウソップを連れて帰ってくれたのよ!」




「・・・」



「航海士さん、遅かったみたい」

「あんたたちが、運んだ奴の後を追って街中うろついてるって聞いて」


「いや、もう、おせえよ」


青い顔をして、ゾロはクイクイと親指でテトラポッドを示す

しかし、テトラポッドの後ろに落ちていった名前の姿はこちらからは確認することはできない



「は?」

「俺、そいつぶっ飛ばした」

「んな!」



ルフィの悪びれのない告白にナミが驚愕の表情を浮かべる

頭を抱えるナミ、今度はサンジが噛みつくようにルフィに向かって大声をあげる




「てめぇ!ルフィ!

無実の女性に手をあげるとは良い度胸だな!こら!」



「はぁ、サンジくん探して来て」

「了解だよ、ナミすわん!」



人間の動きとは思えぬ滑らかな足取りで、サンジは女の落ちていった方

テトラポッドの影へと向かった



思わぬ展開に一同は、口を開くこともなく

ただ、ただサンジが女を連れてくるのを待った



***
**
*




「すまん!!」



力一杯下げた頭

堂々とした土下座に船長としての威厳は微塵も感じられない




「謝ってすむ問題じゃねぇ、ルフィ!

お前は、何の罪もないこの可憐な女性名前さんに、あろうことか顔を殴るとは何事だ!!」



「もう、済んだことをいつまでもグダグダと」

「あんだとこら!」



「いやー、しかし、お前、すげぇなぁ

俺、かなり本気で殴ったんだ

何で、怪我してねぇんだ?」



足を組み、膝に両腕の肘をついて手の甲に顎を乗せ、名前はにっこりと微笑んだ



「あなたも、凄かった

あれは、悪魔の実の能力?」


「おぅ、ゴムゴムの実を食った」

「あぁ、だから伸びたんだ」




ルフィの説明にあまり、驚く様子も見せない名前

その様を注意深く観察するゾロ

ほんの少しでも怪しい動きを見せれば、ゾロは躊躇なく名前を切って捨てるだろう




「でも、名前さんに怪我がなくて本当に良かった

この美しい顔に怪我なんかさせたりしたら、死んだって償いきれねぇ」

「じゃあ、泳げないのに海賊なんだ?」

「そうだ」




名前の動きは、一見何も考えていない、警戒心一つ無いようにすら見える

しかし、その動きは滑らかで無駄がない

こちらが警戒してみると、隙一つないことに気付かされる




「名前さん?名前さんなんて呼び方は少し他人行儀すぎるな

そうだ!これからは、名前ちゃんと呼ぼう!」



サンジの言葉に耳を貸すものは一人もいない



「さっきの剣幕上げてた人とは別人みたいね」

「そうか?」

「ごめんなさいねー、こいつらが早とちりしたばっかりに

うちの船員の一人がちょっとやられて、こいつらも殺気立ってたもんだから」



これだけ強いなら安心して、次の島に渡れる

決めた!私、この船に乗るんだ




ちんたらと続く会話に遂にゾロが痺れを切らした



「てめぇ、何もんだ?

ルフィの拳を受けてなぜ、無傷なんだ」




「おい、ゾロ、名前ちゃんに謝りやがれ!」

「てめぇは、すっこんでろ!おい、チビ、本当にウソップをやったのはてめぇじゃねぇんだろうな」



狭い船内の空気が途端、ピリッと張り詰める

それでも、名前は浮かべた笑顔を崩すことはない




「鼻の人に手は出してない」

「じゃあ、あそこに転がっていた5人はお前か?」


「んー?」

「どういうことよ、あの5人もあんたたちがやっつけたんじゃないの?」



「いいえ、私たちが波止場にたどり着いた時、彼等は既に倒れていたわ

そこに、彼女が一人座って海を眺めていた

状況から見て、彼女がやったと考えるのが妥当なんじゃないかしら?」




それまで、隅で本を片手に無関心を決め込んでいたロビンが冷静に推理をする



「お前も、能力者だな?」

「んー?」



名前の生返事にゾロの苛立ちは募るばかり



「答える気は毛頭ねえんだな」



ガタリと乱暴に椅子から腰をあげたゾロ

その目は疑心に満ちている

名前は目を細めて見返した



「ベラベラと自分のことを話すよりも、少し秘密を持つ女

そっちの方が魅力的じゃなぁい?」



挑発するような名前の物言いに、ゾロは背を向け船室から出ていった

バンと乱暴に閉めたドアはせめてもの、名前への苛立ちの表現だろう

しかし、名前はそんなことに一向、気にする様子は見せなかった




「名前ちゃん!素敵だ!

秘密のある女性!なんて、魅惑的な響きなんだ!」

「でしょ?」

「俺は、よく分からん!秘密は、守らなくちゃな!」



相変わらず、的を外したルフィの言葉に名前の期待は高まる




・・こいつらなら、いけるかもしれない

また、海賊っていうのがちょうど良いしね




「ねぇ、さっき殴ったこと

謝るだけじゃすまないってやつ」


「えぇー

お前、さっきは、なんにも言わなかったじゃねぇか」



まぁるく頬を膨らますルフィ




「ふふっ、お詫び、してよ」

「金はねぇぞ」

「そうよ!大金ふんだくろうたって、それだけは私が許さないからね!」

「お金に必死のナミさんも素敵だー」




・・疲れる

話がちっとも進みやしない




「お金、じゃないわ

私をこの船に乗せて?」


「ダメだ!!」




キッパリと断られるとは微塵も思っていなかった名前

驚きのあまり目を見開くが、それは、ほんの一瞬

すぐに、またもとの感情を見せない笑顔が現れる



「どうして?

お金じゃ解決できない、ならこれくらいは良いじゃない」




笑ってはいるが、名前からは必死さがあふれている




「そうよ!ルフィ!

船に乗せるくらい!」


「ダメだ!俺は、自分の仲間は自分で探す!」




「ん、仲間になりたいんじゃないのよ

私は、次の島に渡るための手段が必要なの

次の島に着いたら、私は船を降りる」




「ん、ならオッケーだ!」




はぁ、これでとりあえずは次の島に行けるわね

この船が沈まなければ、だけど、ね





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