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黒羽海賊団の狙い打ち

「着いたーー!

いいか!お前らー!

上陸だーーー!」


「着いた?着いたのか!?

うほー!でっけー島だー!

俺、新しい医学書が欲しいなー」


「よー、チョッパー知ってるか?この辺りの海にはな、伝説の大王イカが現れるんだ!

なんと!体長は100mもあって、この辺りの島に住む人間はそりゃーもう、恐ろしい目に合わされたんだ」


『すっげぇぇぇーー!100mーー!!』


ウソップのほら話を真に受けて目をまあるくするルフィとチョッパーは馬鹿で可愛い





「ちょっと!そこ!うっさい!!」




大騒ぎをしているこの海賊船は、何を隠そう麦わら海賊団




船上で馬鹿話をし、騒いでいるのはルフィ、ウソップ、チョッパー

その騒ぎに遂に堪えきれず、大声を張り上げたナミ

そんな騒ぎを気にも停めず、高いびきを掻いて眠っているのがゾロで、本を読むのがロビン

船内から芳ばしい匂いを立てているサンジ





そう、たった7人の少数海賊団だ

しかし、少数精鋭

これまで起こした数々の事件に海軍も、放ってはおけないとヒシヒシと感じている




そして、この賑やかな海賊団は、今、まさに一つの島へと上陸の準備をし始めている




「さあ、あんたたち!

あそこの入り江に船を寄せるわよ!」

『お、おぅ〜』




先が思いやられる、この有り様

ナミの怒鳴り声に耳を傾けず、騒ぎに騒いだ結果、ナミの渾身の拳骨が全員の頭上に落ちたのだ




一向が上陸にと決めた島の入江

島は小さく、船上からでも、島の地理がおおよそ把握できる

入江からはほんの、2,3キロメートル離れた場所に小さいが賑やかそうな町が見える




***
**
*



「はい

今回のお小遣い

無駄遣いしても、この島ではこれ以上、渡さないからね!」


「うひょーー!俺は、肉!肉を買うぞー!」



「俺はなー俺はなー!本屋に行くんだ!」

「ふふっ

船医さん、私もご一緒させてもらって良いかしら?」

「おー!ロビン!一緒に行こー!」




各々、思い思いの買い物があるようでウキウキと、船を降りて行った




「おい!マリモ!」



「あん?何の用だよ

ぐるぐるコック」


「なんつった、コラ!

俺は、食材の買い出しに行くからしっかりと船の見張りをしとけっつってんだ!」


「さっさと行け!」


まともとは言えない交渉は、掴み合いも含め成立したようだ





「よっしゃーー!

俺は気合い入れて、新兵器開発のための材料調達だー!」

ウソップは、町へとたどり着くと意気揚々と珍しい商品購入のため、裏路地へと歩を進める





その後ろから人相の悪い男たちが付いてきているとは夢にも思わずに





***
**
*





「はっはっはー!

やっぱり、俺は天才だー!

こんな、小さな店で掘り出し物を沢山、見つけたぞー!

さあ、戻ったら、何から作ろうか

まずはだなー

ふっふっふ!」





「よぅ、兄ちゃん

羨ましいなー、掘り出し物見つけたって?

俺らにも分けてくれや」





人相、風体の悪い男が5人

気づけばウソップの後ろにズラリと並んでいる




「な、なんだよ!てめぇら!」

「俺らか?俺らは黒羽海賊団だ」

「く、黒羽?黒羽ってあの、烏がいるところか!?」




「ほう、兄ちゃん、よく知ってるな

知ってるなら話が早い

俺らのボス、烏には逆らわねぇ方が賢明だぜ?

一旦、逆らえば、闇夜に隠れたってムダだ

あの、烏の真っ黒な瞳が、いつまでもいつまでもてめぇの背中を狙い続けることになるからな!」



「ぐふふ、鳥目なのに」

「てめぇは、黙ってろ!」




5人のうち小肥りの男は、仲間の揚げ足をとり、後頭部を殴られるが、それでも笑いを止めようとせず、まだ一人、クスクスと笑い続けている

リーダー格の男は、その男を一瞥するが、特に咎めるようなこともない

いつものことなのだろう




ウソップは、全員の顔をゆっくりと見渡す

どの男も皆、一様に背や腰に武器とおぼしきものをぶら下げ

体格にそれぞれ差はあるものの、皆間違いなく、ウソップと比すれば、腕力、体力共に高かろう




賑やかな町も少し中心地から逸れると、人気を全く感じない




「・・お、お前ら、俺を誰だと思ってる!

、ウソップ海賊団のキャプテーンウソップとは俺のことだ!

俺には手を出さん方がいい!な、なぜなら、俺には、100万人の手下がいる!

も、もし、俺を殴ったりしたら、俺の部下が黙っちゃいねぇぞ!」




ウソップは、大きな声を出し、せいぜい強がってみせる

しかし、一介の海賊団にそんなはったりが効くはずもない




「・・・ぶ、ぶははは!

おもしれぇじゃねぇか!だったら今すぐ、その部下どもをここに呼びな!!」




ぶんっと軽く振っただけのように見えた

リーダー格の男の持つサーベルは、狭い路地裏にミチミチと積み上げられた煉瓦の壁を一瞬にして抉りとった





その、様を見るや否やウソップは駆け出した

走る方向がさらに町から、麦わらの船のメリー号から遠ざかっているとも気付かずに




「ひょ、ひょえぇぇーー!アブねぇ〜!

あんなのありかよ!

逃げろー!全力で逃げねぇと殺される!

たしか、船にはゾロがいたはずだ!そこまで、たどり着けば・・」




抜け出た路地

その先に立つのは、今の今まで自分の後ろを追いかけ、走っていたはずの黒羽海賊団のうちの3人だ




「う、嘘だろ

なんで、お前らが俺より先に・・」



3人の後ろには、燃えるように赤い夕日

血を連想させるような赤い赤い光が、今まさに、水平線へと消えていこうとしているのだ




***
**
*



「見ろよ

この、間抜けな面」



ゲラゲラと下品な笑い声をあげ、5人の海賊は、血にまみれたウソップの体を蹴り転がす

波止場のコンクリート上は、ウソップの血で赤く染まっている



「この嘘つきのせいで、無駄な時間を費やしちまったぜ

なーにが、掘り出し物だ

こんな、ガラクタぶら下げて、寝言は寝て言えってんだ!」




「・・・げほっ、うげぇ

か、返せ・・・

それは、お、俺の、だ!」



「はっ!俺たちだって、こんなもんいらねぇよ!!」




ウソップが買い漁った品物を詰めたずだ袋

一人の非情な男は、ドカッと袋の底面を蹴り上げ海に落とした

ウソップが伸ばした手は、虚しく空を切った




「こんな、船員のいる麦わら海賊団ってのも結局、たいしたことねぇんだぜ!

船長の器も知れてるってもんだ」




この時の笑い声には、ウソップも黙ってはいられない

どんなに嘘をついても、ついてはならない嘘

この信念だけは、絶対に曲げちゃならない



仲間を大切にする気持ち、仲間を馬鹿にされたときの怒りと屈辱

ウソップは、残った力全てを振り絞り、最も近くにいた男の脛にかぶり付いた



「いでぇぇぇぇぇ!!!」

「この野郎!ふざけんな!!」




別の男に鳩尾を蹴り上げられ、胃の中身を全て吐ききったところで、ウソップの意識は途絶えた




***
**
*



「こいつ、確か麦わらの一味だぜ」

「麦わらっていやぁ、最近オッズが上がって、1億の賞金首になったとか」


「はぁ?嘘だろ!?

こんな弱ぇやつがそんな船に乗ってるなんて!」



「でも、もしそれが本当ならこいつを使って麦わらの首が取れるんじゃ」

「バカ言え!こんな小物さっさと見捨てるに決まってる」



「麦わらっていやぁ、少数海賊団だ

こんなやつでも、数少ない大事なクルーって可能性もあるんじゃ」

「マジかよ、じゃあ、俺らが麦わらの首を取れたら・・・」

「あぁ、黒羽の海賊団で船長から一個師団を預かるのも夢じゃねぇよ!」




うおーっと盛り上がり、テンションを上げる男たち

それでは、早速とウソップを担ぎ上げようとした




「ねぇ、その人、どうしたの?」



何の気配も感じなかった

だから、突然の聞き覚えのない声に呼び止められ、5人の心臓は跳ね上がった







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