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一味の危機




「なんだ?この臭い」

「あ、なんかいい臭い・・」


「く、くせぇー」






鼻を押さえて涙目を浮かべるチョッパー






「私は、パフュパフュの実を食べた香水人間

ありとあらゆる匂いを操るの」







グラリと体を傾がせて、地に手を付く麦わらの一味

既にルフィは大口を開けて高いびきをたてている







ナミとウソップも目を閉じている






必死に頭を左右に振り、眠気に抵抗しているのはゾロ、サンジにロビン

しかし、眠りに堕ちるのはもう間もなくというところだ






「おい、皆どうしちまったんだよ?」

いまだに、鼻を押さえるチョッパーは心細そうに皆を見やる






その姿を見て、女は不愉快気に声を荒げた






「ちょっと!どうして、私のラベンダーパフュームが効かないの!?

この臭いは、体の疲れを取る代わりに安眠効果で眠らない奴なんていないはずなのに!!」






「落ち着け、見ろあの姿を

人じゃねぇ、タヌキだ

イヌ科の動物だから、きっと鼻が利きすぎて、リラックスとは程遠いんだろう

強すぎる臭気が眠気を妨げたんだ」






「タヌキじゃねぇ!トナカイだ!

じゃあ、皆この臭いを嗅いだせいで・・・」






女は売って変わって、にんまりと口角をあげた





「ふふっ、この匂いを嗅いだらそう簡単に目は覚めないわよ」








チョッパーは、すぐ隣でイビキをかきはじめたウソップの頬を強かに両側から叩く

「起きろ!ウソップーー!!」





しかし、一切目を覚ます気配はない






眠気を堪えていたサンジとロビンも遂に体を地面に預け、寝息を立て始める

そんな中、ゾロは手に持った刀を振り上げ、自身の足を切りつける





ぐっと歯を喰い縛って





「はっ、しぶといねぇ

しかし、仲間は皆既に夢の中

てめぇ一人で、その足・・一体何が出来るってんだ」







その声に視線を上げると、黒羽の一味は女を除いていつの間にか鼻栓を詰め込んでいる

なんとも間抜けな姿







「いやいや、そんな間抜け姿を晒したお前らにはこんな足で十分

釣りが来る

それに一人じゃねぇ・・・チョッパー!!」



「お、おう!」





小さなチョッパーは、悪魔の実の能力を使い、大きく変身する





「スニーズパフューム!」


女が大きく息を吸い込み、一束に息を吹き出す






「ふぇーーーっくしょん!!!」

「ヘックシューーーン!!」



ゾロとチョッパーは、大きなくしゃみをする






「ぶぇっくしゅっ!ヘークシュッ!」



「くそっ!何なんだ!?

グシュンッ!

急に、クションっ!くしゃみが!ブシンっ!止まらねぇ!」




「ふふっ、スニーズパフュームを嗅いだら、鼻を刺激して、くしゃみが止まらなくなるわ!」






女は愉快そうに笑う

「今度は、そっちのタヌキちゃんにも効いたみたいね」






「ヘックシッ!タヌキじゃねぇ!ブシュッ!トナカイだ!ベシっ!」


止まらないくしゃみに、ゾロもチョッパーも涙目になっている





そして、戦闘体勢もままならない麦わらの一味に向かって一際、大きな刀を担いだ男が地を蹴り刀を振り上げた



真っ先に攻撃を仕掛けた相手は、ロビン





「ヘックシン!」




ガキーン

激しく刀と刀がぶつかる音




「眠った女を真っ先に狙うとは、剣士の風上にも置けねぇな

クション!」






「ふん、その女も能力者なのだろう?

眠りに落ちる寸前に妙な構えをしていた

能力者なら、男も女も関係ない」




更に踏ん張り力を込める、男を力ずくでゾロは弾き飛ばす

「くしっ!」




ずびっと鼻をすする





「中々の、豪腕

しかし、足も痛むのだろう?

それだけの荷物を庇いながらでは勝ち目はないぞ


ここで、退けば命だけは見逃してやる」





「大層、記憶力に欠けるらしい

この足でもお前らには、十分だ

仲間庇いながらで、もしかしたら、ちょうど良いかもな」




「くっだらない能力ねぇ」



ケラケラと明るい笑い声が聞こえ、その場で起きていた全員が顔を向ける

そこにいたのは名前






草影から、出てきた姿は、街で見た時と変わらぬ 挑発的な黒いワンピースに、赤いハイヒール




その姿は森の中というシチュエーションには、随分と不釣り合いだ








カツカツとヒールが舗装されていない土を踏み締める音



「いやー、でも好きよ

そういう冗談みたいな、ふざけた技」



「くっ、くだらないですって!?

これでも喰らいなさい!ナジャーパフューム!!」



途端に異臭が辺りを包み込む

くしゃみが止まらずもがいていたゾロとチョッパーは、鼻と口を覆い、地面に突っ伏す







『う、うげぇっ・・ゲホっ』



口から胃の中身が溢れ出す

それほどに強烈な臭いなのだ





「そこでいつまでも、平伏していろ

・・雑魚が」



男は刀を担ぎ上げ、今度はサンジを力一杯に蹴り上げた





浮いた体は次に地面に刀の峰で叩きつけられる





「ぐはっ!」

血を吐くほどに痛め付けられても、サンジは目を覚ます様子はない





「意外ねー

ただの臭いだけで、そんなにも色々できるなんて

能力は使い方次第なのねー」





「なによ、あんた・・

鼻利いてないんじゃないの!?どうしてよ!

どっからどう見たって、ただの人間じゃないの!」




たった一日のうちに、能力が効かないことが立て続けに2回も

女は納得がいかない





名前は、ウソップの鼻を掴み上げ強かに頬を打った





既にチョッパーによって、両頬を腫らされているが、ウソップはゆっくりと目を開く

最早、原型の残されていない顔に名前は思わず吹き出した





「なんだなんだー!?人の顔見て吹き出すとは失礼な奴め!」



「その愉快な顔、鏡で見てこい」





ゾロは、胃の中身を残らず吐き出し、口元を拭ってようやく顔を上げた






「んー、その能力面白いし、もう少し見ていたい気もするけど、その力使われると圧倒的すぎて、喧嘩としてはいまいち

だから、お姉さん、ちょーっと・・・」






そこまで話すと、名前は、一瞬皆の視界から姿を消して、気づけば香水女の懐に潜り込み、手刀を下から女の顎目掛けて叩き込む




香水女の体は後方に飛ばされ、背後の大木に打ち付けられた





「ぎゃあっ」

「引っ込んでてくれるかしら」




動きの速さとは裏腹に名前は、艶やかな笑みを浮かべた





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