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旅の目的





「さっきといい、今のことと言い

その挑発的な格好が原因だってことは・・」





短いスカートから見える細い足、大きく開かれた胸元から除く華奢な鎖骨を指摘されていることはすぐに分かる






「人を探している

海賊相手だから、こんな格好の方が早く決着がつくかと思った

でも、私が考える以上に海賊っていうのは馬鹿な生き物みたいね


よくもまあ、次から次へと有象無象が寄ってくること」







小さな拳を軽く顎に当てがい、悩んだようなしぐさ






「本当に馬鹿ばっかりだ

こんな女の何が良くて声を掛けんだ?」





その声を聴いて名前は綺麗に口角をあげて笑んで見せる






***
**
*






「私が探してるのは黒ひげ海賊団っていう最近、できたっていう一味を探してるの」





ゾロによって再び、麦わら達の元に連れてこられた名前

しぶしぶ、旅の目的を打ち明ける






「黒ひげ海賊団〜〜っっ!!!」




「おいっ、ウソップ、黒ひげ海賊団ってなんだ

ウソップの知り合いか」





ひときわ、大きな声をあげ、慄くウソップにキラキラと好奇心を剥き出しにして、チョッパーが訪ねる






「バカ!

知り合いじゃねぇ!!知り合いじゃねぇが、よーく知ってるぜ


あの白ひげ海賊団を裏切って、悪魔の実を喰い逃げし、新しく海賊団を作り出したティーチが率いる海賊団」






「悪名高く有名よ

各島で黒ひげ海賊団が、強奪殺戮を繰り返していて、懸賞金は0」





「懸賞金0!?ってことは大したことじゃないんじゃないのか?」





「いいえ、驚くのは懸賞金の額じゃないのよ

黒ひげ海賊団は白ひげ海賊団から分家して間もないから、政府も額を決めかねていただけ

白ひげ海賊団にいたときは、きっとそんなに目立たなかったのね




そして、独立してからの快進撃に、白ひげから盗んだ悪魔の実の能力の未知数さ

史上初の懸賞金0からの王下七武海入りを果たしたってわけ」






へぇ、よく勉強してるわねと、名前は脂汗をかくナミに目をやった

争い事は苦手なのだろう




いかにも力のなさそうな細腕






力のないものが生き残る術は、世情に精通していること、そして、その知識を活かす知能






この海賊団たちは、本当に一人一人に目を見張る何かしらの能力がある

ただ、頭数ばかり集めた、役立たずの寄せ集めよりずっと、将来が有望だ






そういった意味では黒ひげも・・たったの5人でグランドラインを突き進む







「何考えてるんだ!!やめておけ!いくらお前が強くったって、殺されちまうぞ!!」




「あら?心配してくれるの?お優しいことで

心配なら一緒に来てくれる??」





名前はからかうような視線でウソップの顔を覗き込む






「うっ!持病の海賊には会ってはいけない病が・・・」






「おう、いいぜ、お前は仲間だからな

ところで、名前〜、そのティーチって奴に会ってどうすんだ?」





「か弱いレディの頼みとあっては、断るわけにはいかないが、名前ちゃん

確かに、その目的は聞かせてもらわねぇと」






いや、からかっただけで、決して仲間になっちゃいないし、頼んでもいやしない

心の中でそう毒づきながら、小さく息を吐く






「・・・気に入らないのよね

あいつ、

悪魔の実を悪用しようとしてる」





「・・悪魔の実なんて、喰っちまった奴のほとんどが海賊か、海軍か

いずれにせよ、戦闘能力を格段に引き上げるような力だ

悪用してるのなんて今更、その黒ひげって奴だけじゃねぇだろ」






面倒そうにゾロが呟いた






「・・・そんなの関係ないね

私はあんたら人間がどこでどんな悪行を重ねて、殺し合いごっこをしているかなんて知ったこっちゃない



能力を使って、戦争でもなんでも勝手にすればいい

人間の法律を破ったってそれは、人間同士で裁き合え



だが、あれは私たち悪魔の力だ、悪魔の恩恵を与るからには、私たちの掟は守ってもらう



悪魔の実の能力について、勉強熱心なのは感心だが、それが私たち悪魔を侮辱せんと考えての行動なら、私があの男に裁きを下す」






一切の表情を映し出さない名前の顔には、いつもの愛らしさも、柔らかさも感じない



頬杖をつき、机の一点を見つめる名前からは殺気が満ち溢れていた






お前たち、人間のような甘い判決が下されると思うな

その過信して手に入れた能力の本当の恐ろしさを、どんなに後悔しても足りぬほど存分に味わわせてやる







***
**
*





キャーッと絹を裂くような悲鳴が街中から沸き起こり、麦わらの一味と名前は表へ飛び出す






表には海賊のいわゆる鉄砲玉のような一人ひとりには何の価値もない輩たちが軍勢となって、街を練り歩き、人々を襲い、略奪し、下品な高笑いを上げている






昼間に小さな騒ぎをあちらこちらで起こしていた海賊たちは、まるで皆出払ってしまったかのように誰一人として、顔を見せることはない






軍勢のうち数人が表に立っている名前達に気が付き、刀を肩に担いで、ゆらりゆらりと重心を定めないような歩き方で向かってくる




不意に、ルフィの前で足を止め、にやりと不敵に笑い、ルフィを見下ろした







「よぉ、てめぇ

麦わらの一味か?」




「そうだ!!俺はモンキー・D・ルフィだ!」






げっげっげっと低く引き笑い、そして、何の前触れもなく、担いだ刀を振り下ろす




ルフィはそれを予想していたかのようにふっと体を傾けた

紙一重でかわされた刀は地面に深くめり込んだ





「おい、てめぇら何のつもりだ?」





一瞬のスキを突き、サンジの足が男たちの首筋にあてがわれる





「おい、サンジ、手ぇ出すな」







途端、後ろでぼんやりと観戦を決め込んでいた男たちが懐から拳銃を抜き出し、ウソップ、ナミ、チョッパーに向けて構える





「「「ぎゃーーーーーーーっっっ!!!!!」」」






ギンっと鈍い音を立てれば、ゾロが放たれた弾丸を切り、真っ二つになった銀の弾は地面に転がった







一触即発の雰囲気

その場にいる全員が、重たい緊張感と闘争心を剥き出しにし、誰か一人が地面を踏みしめる音でもすれば、一斉に戦闘が開始されるだろう







しかし、名前が見ていたのは、自分たちに向けられた敵意でもなければ、街を襲って人々の悲鳴と絶叫に喜び浸る奴等でもなかった





海賊団の船長と思われる物々しい様相で街の奥を目指す5人組






街の奥には、デンデンの植物がある・・・

そう思った瞬間、ロキと見たあの美しい景色がフラッシュバックした









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