×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




光る植物




「この島がデンデン島って言うのは、島の植物に由来しているわ」




「植物?」




「そう、この島の植物は他では見られない特性を持っている

今となっては、島が開発されていって森やら、林やらほとんど切り倒されてなくなってしまったみたいだけどね

でも、島の奥地にはわずかばかりのその植物も生息しているらしいわ」





「その特性って、何?」





「触ると光るのよ

パッとね」





両の手を広げて、みせる





「光る?植物が?」




「そうよ、けっこうキレイなの」





「噂に聞いたことがあるわ

でも、密猟や裏の売買でもう残っていないのだとばかり」





「わずかに残った植物は、保護されていて、一般には見れないようになってる」





「いいな〜

光る植物か〜欲しいな〜

食ったら旨いかなー?」





「ダメだぞルフィ!聞いてなかったのか!?

もう、ちょっとしか残ってないんだぞ!」





そう、名前がこの島を昔に訪れたときは、島には人が住んでおらず植物に囲まれていた

夜には、一輪の草木を揺らせば連動して隣また隣と次々に光が広がり、それは壮大で見事なものだった






その時の景色を思い出し、懐かしくなる


ロキと二人で見た







「一輪だけ手に入れて、メリー号で増やそう」

「でも、確か草木は切ったり、地面から抜いたらほんの2、3週間ほどで光らなくなるんじゃなかったかしら」





ロビンは、名前に目を向ける



ぼんやりとしてしまっていた、名前は向けられる視線に気付いて、ふと現実に引き戻された






「ん、あーうん

そーね、だから密猟者はそれを知らない無知な奴や、ほんの少しの期間でも楽しみたいと大金を払う高慢な貴族相手に売り飛ばしてたのね」





一時の流行りで、絶滅寸前まで刈られた丸坊主の島



さらに追い討ちをかけるように、この島に人間が移住し住み着いた




その時のことを思うと、名前はやりきれない気持ちになる






「私、まだやることがあるから」



フワッとスカートの裾を靡かせて名前は立ち上がった




「あ、おい!

俺らの仲間になれよ」




「い、や、よ」


クスリと振り向き様に妖艶な笑みを見せて、船から立ち去った





「ブゥーーッ」


頬を膨らませ、ルフィは机に突っ伏した





「あの様子だと、名前は、もしかしたらこの島が自然に囲まれていたときのことを知っているのかもしれないわね」






「まさか、ロビン

だって、ロビンも言ってたじゃない

何十年も前に島の植物は採り尽くされたって」





「・・・私、あの子は見た目と年齢が相関していない、そう思うのよ」





ロビンの一言に皆が口をつぐむ

気付けば船に、ゾロの姿が見えない






***
**
*






再び、街中を歩き回る

相も変わらず声をかけてくるのは、下品な海賊ばかり






適当にあしらい、時には、聞こえない振りをする






すると、突如乱暴に左の腕を掴まれ、後方へ力強く引っ張られる



振り返れば、強かに酒を飲んで真っ赤な顔





泥酔一歩手前の千鳥足の男が、アルコールの臭いをぷんぷんさせて、名前の手を握っていた



「いよぉ、姉さん、おでとぉ、一緒に飲もうや」



大口を開けて笑えば、臭気で思わず吐き気が込み上げる







さっと掴まれていない手で口と鼻を覆うが、そのそぶりに男は気を悪くしたらしい




「おいこら、この女なめてんのか」




はっきりとしない呂律

覚束ない足元





振り上げた拳は全く手に力がこもっていない






こんな形で命を落とせば死んだことすらも認識しないままなのかなと思った瞬間、男の背後から、首もとにギラリと怪しい輝きを放つ鋭い刀があてがわれる




ほんの数ミリ動かしただけで、一筋の真っ赤な血が流れ落ちる





「おい、その女を離せ

俺は女に用がある」





その緑色の短く刈り上げた髪は間違いなく麦わらの一味、ゾロ




酔っぱらいは、その懸賞首の顔をよく見知っているのだろう





真っ赤な顔から噴き出すように汗が浮き上がる





「わ、分かった

離す、離すから」





その、弱々しく放たれた降伏の宣言にゾロは、刀を引き、鞘に納めた





滑稽にも酔っぱらいは、腰を抜かして尻餅をつき、ひっと呼吸を引いて、這いずるように街中へと逃げ去った






「・・・で?

何の用?」




掴まれた腕が少し汚れてしまったような気がして、パンパンと埃を払うような仕草






「何の為にここに来たんだ」




まともな答えが返ってくるとは思っていない

でも、聞かずにモヤモヤしたままいるのは性に合わない






名前の正体が気になって仕方ないのは、ただの人間じゃないことだけでなく、あの、人を引き付ける雰囲気






少なくとも、ルフィも惹き付けられ仲間にしたいと考えている


ルフィとは違った魅力があの女にはある






仲間になりたいとは思わない

ただ、このまま何も知らず、この女が何者であるかも知らずいるのも気に食わない






「助けなんかいらなかったのに」


「だろうな・・」






だが、俺が入らなければあの酔っぱらいの命はなかっただろう






「お前、人を殺すのに躊躇ったことは?」




海賊狩り

そう呼ばれていただけあって、俺も今まで数えきれないほどの人を切ってきた





だが、積極的に人を殺したいとは思わない

相手は選び、殺すに値するか、殺さなければならない状況下にあるか






「躊躇わない

今はね」





まっすぐに俺へと投げる視線は、決して俺を見据えておらず、どこか遠くを見つめているように感じた






「罪悪感を持たないこと、後悔をしないこと、

さもなければ、自分が危うくなる」





寂し気に揺れる瞳に、初めて名前の弱い一面を見た気がした




「私は、悪魔・・

人に情はかけない・・・」






最後に放たれた一言

小さく、自分に言い聞かせているようにすら見えた





[ 18/23 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]




top