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目的地

潜水艦で海中に潜って3日が経つ



そろそろ、太陽の光が恋しい





最初は見慣れぬ海中の光景に胸を躍らせたが、船が進んでも進んでも、どこまで行っても魚、魚、魚

飽きないわけがない




考えてみれば、そもそも私は海が嫌いなのだ




潜水艦の中で、海賊たちはカードゲームやボードゲームに勤しんでいる

そりゃそうだ

ほかにやることなんて、何にもありはしない





ぶらぶらと潜水艦の中を歩き回ってみるが、3日も経つと探検でもなんでもなくなる

潜水艦の中は熟知した




未だに行ったことのない場所なんて・・・



そう思っていると、ふと考え付く

船長室にはまだ行っていない





新しい遊びを思いつき、退屈から一遍






***
**
*




「おい、何のつもりだ」


「何って、潜水艦の散策?」


「ここは、船長室

 俺の部屋だ」

「うん、知ってる」




片手に、本を持ったローが名前の部屋への侵入をドアに手を付き、妨げる

不愉快そうに、目を細めるローに対して名前は実に楽しそうに眼を細める



体の小さな名前はするりとローの手を潜り抜け、部屋へと素早く入り込む






「おいっ」


「だって、わたし、この部屋に近づくなとか言われてないもんね

へぇ、読書家なんだ

結構、たくさんあるねー」


室内に構えられた、大きな本棚の前に立ち、感心したように名前は声を上げる




「なんでも持って行っていいから、出ていけ」


「はいはーい」



手短に目の前にある本を抜き取る



「そっかー、あんたって医者なんだね

医学書ばっか」


分厚い書を抱えてページを繰る名前の姿は、それまで見たことが無いほどに真剣な表情をしているようにローには見えた



書物は名前には不釣り合いなほど大きくて、しかしそれでいて本を眺める名前の姿は文学少女という言葉がよく似合う




その様を見れば見るほど、名前屋から感じた恐怖、只者ではない気配が嘘だったのではないかと思える




こんな小さい女に何を怯える?

こんな細い体でこいつに何ができる



そんなことを思いながら、名前屋の横顔を見つめていると本からふと名前屋が顔を上げる




目が合い、ドキッとした

あまりのタイミングの良さに、考えを読まれたのではないかと思わずにはいられなかった



「もったいないねぇ

せっかく身に着けた医学の知識も、海賊なんかじゃねぇ」



「うるせぇ

俺は、やらなきゃならないことがある

そのために、医学を学んで海賊になった

口をはさむな」



ふうんと呟き、名前は本に視線を戻す



「まぁ、あんたの手に入れた悪魔の実の能力ってうってつけだもんね

何て言ったっけ?」

「オペオペの実

もういいだろ、その本を持って出ていけよ」


煩わしくて、冷たく言い放つと名前屋はパタンと本を畳んで本棚のもとあった場所へと戻した


「いーらないっ」



クルリと身体を翻し、悪戯っぽく名前は笑った

そして、トントンと軽い足取りで、船長室を後にした



まるで、嵐が過ぎ去るが如く






***
**
*




「キャプテン!キャプテン!

島です!前方に島が見えました!」




二足歩行の熊が、潜水艦周囲の状況をローに報告している

なんだろう、このシュールな光景は・・

あれは、人じゃないよね

熊?あれは、可愛いのか?




麦わらの船といい、このローの船といい、海賊って言うのはなろうと思えば誰でもなることが出来るんだな





そんな時代がやって来たのだな、と名前は心の中で納得する







名前の視線に気付いた、熊もといベポ




「熊が、報告してすいません」





そんなネガティブな発言に気を止めることもなく名前は、潜望鏡から外を覗き見た





そこには、思わぬ光景が




ここ数年、行きたくてもたどり着くことのできなかった故郷の島が堂々と海の真ん中に浮かんでいる






懐かしい故郷の姿に、驚きのあまり、咄嗟の声は出なかった



「目的地か?」



ローは、ベポにログポースの示す島か確認をとらせる

「違うよ、キャプテン

ログポースは、まだより南の方を示してる!」





「・・・船の食料は」

「まだ、余裕であります

1週間は裕にもつでしょう!」



ベポに連れられた料理長

恭しく、胸の前にコック帽を抱き締めて答えた








「ねぇ!次の島までって言ったけど、私をあの島で降ろして!」

名前の突然の申し出に、船員が一斉に名前の方に眼を向けた



「あの島は?」



「私の目的地」

ニッと名前の広角が上がる






「・・・あそこのログは」


「・・なに?」






ポツリとローの呟いた声に名前は、訝しげに聞き返す


「あそこのログは、何日ほどで溜まるんだと聞いている」

「は?」




「俺は、名前屋、お前に興味がある

俺ら、ハートの海賊団もあの島に寄ることにする

だが、進路は外したくない

だから、滞在期間はあの島でログが溜まる直前までとする」





腕を組、奮然と放った言葉に名前屋が眼を白黒させる

その姿が痛快だった





夕べも、突然の部屋への訪問

好き放題に他人の部屋で振る舞って、さっさと部屋を飛び出した


出ていけと言ったのは、俺だが、あまりの傍若無人さに納得がいかないまま





ならば、今度は俺から仕掛けてやろうと機械を待ってみれば、すぐさま迎えたこの好機


そう簡単に逃がしゃしねぇよ







ローの名前を見やる姿に船員たちは、ローが本気であることを悟った


まだまだ続きそうな名前を伴う航海に船員たちは、神経を使いそうな予感を覚えた


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[mokuji]




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