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vs. ロー

「おおーっ

私、潜水艦って初めて!!」


潜水艦の窓に両手をペタリと張り付け、海中を優雅に泳ぐ、魚たちをキラキラとした瞳で名前は、食い入るように見つめる


泳げない名前は、魚が泳ぐ姿を直に拝むのは初めて




「うっわ!うっわ!すごーーっ!!

見て見て見て!うわーっ!ぶっ細工な顔ー」



子供のようにはしゃぎ回る名前に、トラファルガー・ローは先日、名前から感じたおぞましさ、狂気、恐怖は夢だったのではと自分を疑いたくなる



しかし、名前が只者ではないことは確信をもって言えた




柔らかそうな髪をなびかせて、艦内を駆け回る名前の後ろ姿を目で追いながらローは、呟く


「必ずてめぇの正体を突き止めてやるからな」




その声が聞こえているのかいないのか、名前の広角が僅かに上がったことにローは、びくりと肩を揺らした



そして、苦い笑いをこぼした





***
**
*





この海賊の一味は、団結力があるらしい



皆が一様に私の行動観察をしている

しかし、そんな様子を隠しきれていない面にこの海賊団の青さを感じる




そんなにひしひしと、警戒心をにじませるのであれば、ついつい隠し事をしたくなる



喋っても構わないことですら、はぐらかしてしまう私は、性格が悪い





「私の嘘を見破れるものなら見破ってごらん」

と挑発をかける





「・・・上等だ」


私とローの間で、水面下の探り合い、戦いの火蓋が切って落とされる






私は、自信があった

絶対に、こんなひよっ子ごときに正体を暴かれたりしない、と



それなりに、腕に覚えはあるのだろう

だが、その程度のやつにはいままでゴマンと出会ってきている

将来は、有望そうだがまだまだだ、とつい先日に出会った海軍大将たちの顔が頭をよぎる








ローは、自分のクルーをよほど信用しているらしい




艦内をはしゃぐふりして駆け回る私について回るようなことはしない


ある程度、船内を案内すればフラりと姿を消した




一人になって、はしゃぎ回るのも馬鹿馬鹿しくなって窓越しの海面に眼を向ける

こんな、水面下を移動するのは気味が悪い



閉塞感と圧迫感



泳げないこと、海水であることが殊更、恐怖を煽ってくる




じっとしていれば、その恐怖に暗い気持ちに引きずられそうになる

だから、案内された自分の部屋には入らずに、船内を散策して回ることにした



多くの船員が軽い挨拶をかけてくれる




しかし、目が観察、監視あるいは見張るような目付き




そんな視線にも慣れてきた頃、そう、船に乗って3日がたった頃、事は起こった




キッチンでコックに断り、コーヒーをカップに淹れてもらう

ちょうど、そのタイミングにローもキッチンを訪れた



特に話すこともなく、気にも止めずにキッチンを後にしようとしたとき



「おい、あの女、なんなんだ

なんで、船員でもねぇ奴がこの船で、でけぇ面して歩き回ってんだ?」




ふんと鼻を鳴らし、名前は声のした方を一瞥する


ローも吊られたように名前の視線を目で追う



「船長も、なんであんな奴を!」







「言われてるわよ?船長さん

船員の躾がなってないんじゃなぁい?」

くすりと低く笑いを洩らして、名前は、ローに流し目を寄越す




その様に、ローは眉間に深くシワを寄せ、声のした部屋の扉を乱暴に開け放ち、


「シャンブルズ!」

と悪魔の力を発動させた





「てめぇら、こそこそと悪口とはいい度胸だな」

ローの放った低い声に、ローの能力でチグハグになってしまった自分の身体





したっぱの船員を震え上がらせるには十分だったようだ

真っ青な顔で、その場にいた3人は深々と頭を下げた




「私が、この船で大きな顔をしてられるのはねぇ

船員じゃなくても、分かっている

この船で、私は誰よりも強い」





ニヤッと笑って、名前はそのまま背を向けてキッチンを出て行った

そのピンと伸びた背筋にぶれることのない足取り

自信あふれる笑み






ローは、その後ろ姿から眼を離すことができなくなっていた







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