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島から脱出

この島について早3日


延々と降りしきる雨




小さな島

島を真っ二つに分かつように、幅が細く流れの早い川が流れている

3日間の大雨のせいで川は氾濫し、島のほとんどが水面下



私は、水に浸からないように木の上に避難中




今にも、木が濁流に飲まれて、押し流されるのではという不安が頭をもたげる

長く木の上にいたせいで、実際の水位がどれくらいになっているのか、皆目検討もつかない



雨が止んでも、まともに地面を踏めるまでには1週間くらい時間がかかるだろう


ふと、辺りの木を見渡せば私と同じように木の上に避難している人の影



***
**
*



予想通りに1週間

それまで、木に成る木の実を食べ生き繋いだ




ここが、南国の島でなければ飢え死に、あるいはも少し寒けりゃ凍死だってあり得た

ついているのか、いないのか・・・





ぬかるんだ地面には、いくつもの足跡

察するに、先日木の影で見かけた人のものだろう




靴の跡の違いや大きさの違いなどから、十人、二十人・・・あるいは、もっとか・・


近くに船の姿は見受けられない

あったとしても、あの豪雨


どんな大きな船でもただではすまなかっただろう



ということは、この島にあの足跡の主たちがいるのか

しかし、雨がやんでから今現在に至るまでそれらしき人影は見ていない



はて、何処へ行ったのか?



彼等を逃せば、こんな無人の島に次いつ船がやって来るかなんて分からない

いくら、私が時間に縛られないとは言え2年も3年もこの島で過ごすとなってはたまらない




焦りから、少し足ばやになって島の隅々まで見渡せる場を探す

島の最も高くそびえ立った木



慣れたようにスイスイと天辺まで登る

地上から20メートル

ほんの1,2分ほどであっという間に



その高さならば島一帯が見渡せた

そして、見つけたのは、岩肌に見える真っ黒な点



目を凝らしてみれば、それが岩山に穿たれた洞穴であることが分かる

洞穴の入り口前の地は、斑に模様が刻まれている



あれは、無数の足跡だと期待で胸が一杯になる



フワリと木から飛び立ち、地面に着地

ぬかるんだ地面は私の足がめり込んで、何も考えずに飛び降りたことを心の底から後悔する

顔に飛び散った飛沫をジャケットの袖で拭う




***
**
*





洞窟内に入って見れば、目付きの悪い男がわらわらと

岩壁にもたれ掛かり、談笑し酒を煽るもの

なにやら賭け事だろうか、カードゲームをしているものもいる




むさ苦しい・・

中に入ったとたんに、それらの目が一斉にこちらに向けられる




ぞわっと背中を虫が駆け回ったような感覚

しかし、ここで臆することはできない



ゆるりと、平静を保ちつつ辺りを見渡す

この中で、最も目付きの悪い男



私は、この手の勘がすこぶる悪い

他に船長を当てる手段は、思い付かない



目の下に黒々と隈を浮かび上がらせている男

最奥で、岩棚に腰を掛け片手に酒瓶を携えた男




比較的、小柄ではあるが他の奴等より圧倒的にオーラがある

こいつかな?



「おまえ、なんだ?こんなところで人に会うとは思わなかった」


表情一つ変えることなく男が問う




真っ先に口を開いた

間違いなく、したっぱではない



モコモコと大きな帽子に、どくろのマークを胸にかかげている

この目付きの悪さといい、海賊



「嵐に巻き込まれたの

船も流されて・・ねぇ、次の島まで私を連れていって?」

その男の前に膝をつき、上目遣いにねだってみる



「答えろ、おまえ、なにもんだ?」


ちっ、色目は聞かないか


「はぁ、乗ってた船が流された

この島を出る手段が無いのよ」

「おまえ、ただもんじゃないだろ?

俺の納得のいく答えが出れば、考えてやってもいい」


立ち上がり、目を細め、腕を組んで男を見下す



「・・・海賊じゃないし、海軍でもない

強いて言うなら、旅人?

グランドラインを独りで旅している」


じっと品定めをするように、私のつく嘘を1つだって見逃したりしないように帽子の男が睨み上げ見つめている




それまで、ガヤついていた洞窟内はシンと静まり返って

全員が私たちの会話に耳を済ましている




「ただ、私には航海術がない

だから、いろんな船に同乗させてもらって

時には、私を殺そうとする海賊の船にだって乗る」



ニンマリと広角を上げ、挑戦的に話す




「だから、腕はそこそこかもね」

「肝心の部分は、伏せて話している、といったところか

だが、今の話に嘘はねぇ


いいだろう、ただし、俺達も嵐で船がねぇ

出港がいつになるかは、保証できねぇ」


男は怪しく笑い、私を見つめる




「ふふっ、この島のログは10日ほど

あんたらが来て、1週間くらいね


出港は3日後ね」

「船がねぇって言ってんだろ」


男は再び、無表情に威圧的に話す





「嘘つき、船は壊れてない、でしょ?」


「・・・お前、俺達を、俺たちの船を知っているのか?」

「・・知るわけない

あんたたちも、船もね

ただ、なんとなく、あんたが嘘をついたことだけはハッキリと分かる」







***
**
*




今度は、こっちの番と言わんばかりに眼を細めて笑う女

立ち振舞いは、しなやかで無駄がなく、隙もない



海軍でないと言うのは嘘ではないだろう

軍人特有の堅苦しさや、頑なさは微塵もねぇ




鎌をかけ、隠していることを意地でも聞き出してやろう

そう考えて、「船はない」と嘘をつく


その言葉に対するリアクションは、予想外

ポーカーフェイスと評価の高い俺がこうもあっさりと嘘を見破られると思いもしなかった



船に乗ることを許可し、なにがなんでもこの女の正体を見定めてやろうじゃないか



挑戦的で大きな黒い瞳に吸い込まれそうになる気持ちを抑え、心で誓った






[ 10/23 ]

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[mokuji]




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