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人の意思


 母さんがアリスを使った


 私が知ってる母さんのアリスではない

 テレポートのアリスを使った






 校長先生と母さんはいなくなった

 ペルソナと父さんを残して



 「名前ちゃん、これ」

 手に渡されたのは、アリスストーン



 「・・柚香さん」




 「私のアリスストーンは、テレポートが使えるから

  彼を、ペルソナを独り置いていけないから」



 ちらりとペルソナの方を見やると、ぐったりと臥せっている


 コクりと頷く





 
 「行って来ます

  棗くんも必ず」


 ぎゅっと受け取ったアリスストーンを握りしめ、柚香さんに笑顔を向ける



 「俺は、行くぞ」



 翼先輩の懇願するような声に笑みが漏れる


 「当たり前

  置いていかないから、付いてきてください」



 安堵の表情を浮かべた翼先輩の手をとり、柚香さんのアリスを使う

 心を込めて




 「母さんを探すテレポートのアリス」




 ひゅっ






***
**
*






 ふわりと着地するはずが、慣れないアリスの感覚のためによろめく


 ふと、名前の方に目を向けると名前は上手く着地したらしい




 「・・・母さん、いないな」


 何て呼ぶか迷った

 伽耶さん、叔母さん


 でも、名前の呼び方に合わせることにした





 「でも、間違ってない

  さっきまで、母さんはここにいた」


 「・・もう一度アリスを使ったかな」


 名前のほうに目を向けると考え込む様子を見せている




 「・・探せるか

  なんか、アリスとかで」





 「先輩、お母さんに会ったら・・・」


 いつもと比べ物にならないほど、弱弱しい




 「・・何でもない

  ・・・相手のアリスを跳ね返すアリス″」


 「大丈夫、俺がついてる」




 ガクン

 「きざなこと言ってんじゃねぇ」



 膝裏を蹴られて膝から崩れ落ちる




 「・・棗君」




 「・・ってぇ

  ・・・おぅ、無事だったかよ」



 ふんと鼻を鳴らす棗

 くそっ、いいとこだったのに




 「・・お前の母親と校長の野郎は、あっちだ」


 「ってか、なんで棗はここにいんだよ」

 「・・ペルソナのアリスに囲まれたと思ったとき、お前の、名前の母親のアリスでてレポートさせられてた


 気づいたら、ここにいた」




 ふと、気づく

 この部屋の焦げ臭さ



 「校長の奴、かなり焦ってたみたいだぜ

  こんな匂いの籠った部屋でもお構いなしに、飛び出していきやがった」



 そう言って、棗は扉に親指を向けた




 名前は勢いよく走り出していた






***
**
*




 何も考えずに部屋を飛び出した



 たどり着いた部屋には、見覚えのあるものがいっぱい





 任務で、作り続けたアリスたち






 壁一面に備え付けられた、棚に隙間なく並べられている



 その部屋の真ん中に、眠っている母さん

 隣には、校長先生が一つの道具を持って立っている



 「私の伽耶、今、目を覚まさしてあげるよ」





 「お母さんに触らないで!」

 無意識のうちに使ったアリス



 校長先生の動きがピタリと止まる


 自分の意識まで持っていかれそうになる






 「名前、素晴らしいね


  成長したよ

  見事に人間にまで効くアリス、発動させられている」




 校長先生の気が狂った

 そうとしか見えない



 天を仰いで、両手をかざして大声を張り上げて笑っている





 「これで、これで、ついに・・・」





 目を疑った

 母さんは、母さんじゃなくて、もう校長先生の言いなりでしかなくて




 それでいて、ペルソナの傷でもう動けない




 「・・校長先生、やっぱり、人は生き返ってはいけないんですよ

  それを、無視した私と先生は、罰を受けるべきです・・・」



 母さんの手から、滴り落ちる真っ赤な滴




 校長先生の顔が苦痛にゆがんでついに膝をつく





 「・・・伽耶・・伽耶!」



 傷口を抑え、怒りに震える姿

 傷口は決して浅くない




 「・・月、月

  月はどこだ」



 「初校長、その傷は・・・」


 久しぶりに見た月

 最後に分かれた時とは違って、姿から判断する年齢は柚香さんと変わらない




 「早く、早く名前を捕まえろ

  生徒たちを、学園にいるアリスたちを全員此処に呼べ


  絶対に、名前を逃がすな」




 「初校長、それより傷の手当てを」

 口に手を当て、今にも泣きだしそうな表情を見せる月




 ゆっくりと校長先生に手を伸ばすが、頭に血が上り切った校長先生は力いっぱいその手を振り払う


 傷ついた表情



 それだけで、月が校長先生寄せる想いがくみ取れる




 傷ついた表情から一変、月は指を鳴らす


 現れたのは、より大人っぽく顔つきを変えた、櫻野先輩

 ぞくりとする



 成長した先輩、もともとプリンシパルになるほどの実力の持ち主

 アリスを使えば、続々と現れる学園の生徒




 「俺らが、学園を飛び出して追ってこなかったのはこのためか・・」


 「はっ、2週間程度の間にずいぶんと仲間を増やしたみたいだな

  続々と、集まってきやがる」



 ぐるりと囲まれ、身動きが取れない



 ぶわっと棗君の炎が現れる




 「・・死体とは違って、熱さは感じてるらしいぜ」


 「バカ!燃やすなよ!

  学園の生徒だ」

 「知るか

  燃えたくねぇ奴は下がってろ」




 前の時とは違って、炎に無謀に飛び込んでくる者はいない

 月のアリス




 この人たちは死んでいないと思うと喜びが沸いて

 そんな人たちを操り、危険な目に合わせようとする校長先生に嫌悪する



 


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