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ペルソナの願い

 体の染みは後から、アリスに飛び込んだにも拘らず父さんのほうが見るからにひどかった


 母さんはぎゅぅっと父さんの背中を抱く






 ふわりと笑みを見せた

 父さんのそんな顔が見れるなんて思わなかった




 「伽耶ちゃん、俺ね

  言いたかったことがあるんだ

  伽耶ちゃんが好きだよ

  また、公園でかくれんぼしたり、鬼ごっことか

  いっぱい、いっぱい遊びたいね」




 ・・父さん

 父さんの時間は、あの時のまま、事故があった、母さんに向かって微笑みかけたあの時、止まってしまっていた



 学園に手を貸し、母さんを連れて行った奴等とは、校長先生とは何も・・

 ・・何も関係なかった



 そう思うと、母さんを思わずにはいられなかった

 母さん、母さんが生き返らせてしまった、たった1度きりの過ち


 母さんは、父さんが父さんじゃないこと知っていたのかな・・・






 父さんの背を抱く母さんの顔は以前と比べれば、成長した雰囲気を見せているが、やはり昔の母さんには程遠い





 ゆっくりと体重を支えられなくなった父さんが床に倒れていく



 「・・どうしたの?

  ねぇ、先生、動かないよ


  どうしたんだろう、眠くなったのかな

  ・・・それにね、先生、私も体が動かしづらいの


  この、染みのせいなのかな?」





 歩み寄っていく校長先生に手を差し伸べる母さん

 その手を軽く握って校長先生は口角をあげて微笑みかける






 「眠ったんじゃないよ

  死んでしまったんだね、でもすぐに生き返らせてあげよう

  それが、お前の望みならね



  大丈夫かい?伽耶

  伽耶、お前もすぐに直してあげるよ」





 「・・人は生き返らないし、すぐになんか直らない!

  人は、簡単に治ったりなんかしない!

  ・・・だから、人は尊くて愛しくて、たがいに思いやるのよ」



 柚香さんの怒りがあふれた声が容赦なく、校長先生を責めたてる




 「あなたは、何もわかってない

  人の人としての心があなたには、無いのね」



 氷のように冷たい視線を此方へ、ふと見せて





 「思いやりが無いのは、お前もだ

  こうして、生きて、動いて

  こいつらを人間でないと?

  そう言い張るお前らの方が、ずっと酷だと思わないか?」





 「・・・・一番、人間扱いしていないのはあなた

  死体を動かして、戦争を起こしてる

  生きて戦争をしている人にも、無理矢理に体を使って戦争をさせられている人にも、こんな侮辱はないわ」


 「・・ふっ

  それを知って手を貸していたお前は何だ?」




 「・・・同じ

  ・・・ろくでなし」




 「バカ!お前は、ろくでなしなんかじゃねぇ

  こんなに、苦しんで哀しんで、最善を考え続けた奴が同じな訳・・・」




 翼先輩の目が赤い

 それが嬉しかった






 最善を願った

 自分には、選べる未来があると思った



 思い通りに出来るほど力がなかった

 無力だった







***
**
*







 じんじんと痛む腹部に、身体が思い通りに動かせない



 蹴りあげられた腹部に、用なしだと切り捨てられたことを自覚する




 不思議と悲しくはなかった

 いつかは、こうなる日が来ると、分かっていたのかもしれない



 久遠寺校長は、自分を決して裏切らない集団が創りたいのだから




 裏切る気はなくとも、裏切る可能性のある私は、邪魔者





 ・・・先生、先生はもう一度会ったとき、僕のことを罵った?

 裏切り者だと怒ったのかな





 僕、信じてもらえないかもしれないけど、先生が大好きだったんだ

 怒られても良い、もう一度会いたかったな



 どこかで、わかっていた

 私の願いは叶わない



 後悔したって先生は戻らない

 届かない・・・


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[mokuji]




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