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母さんの秘密

 「名前、死んだ人は生き返らないの

  だから、ちゃんとお別れを言える子になって」




 母さんがよく言ってた言葉



 あれは、母さんの後悔が込められた言葉だった




 あの言葉があったから、私は母さんに別れを言う決心がついた


 あの言葉に母さんのアリスは込められていたのかな




***
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*



 「名前ちゃんの見た夢が絶対とは限らない

  でも、細工にしては懲りすぎている



  ・・・信頼してもいい情報だと思う」




 「・・それにつじつまも合って、納得もいく」


 「・・じゃあ、やっぱり名前の父親はとっくの昔に死んでいたってことか」



 ばしっと棗に後頭部を殴られ翼はハッと気づく



 名前の方に目を向けるとうつむいた名前の姿

 背の低い名前が下を向くともう他の3人には名前の表情を見ることなどできない




 「あ、いや、あの、名前

  ・・ごめん」




 4人で想像できた父親の中に伽耶のアリスはアリスを入れる手袋のアリス″



 実の母親の伽耶のアリスなら・・






 水晶玉から放り出された名前の血色は決して良くなかった


 それでも、1ヶ所にとどまり続けるのは望ましくない





 名前のその一言もあって、部屋の先に続く廊下を4人は歩き続けた





***
**
*



 さっきとは打って変わって、真っ白な大きな扉



 高さもさっきとは比べ物にならないほど、高くそびえたっている






 「・・同じ轍は踏まない」



 扉を見つめたまま、名前はつぶやき、今度は名前が扉のノブにゆっくりと手をかけた





***
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*



 口を堅く結んだ名前



 その視線の先には、Zのアジトに乗り込んだ時に見かけた女

 ・・・名前の母親・・・・




 「・・見たことのある顔

  前に、研究室に来たことがある方たちね」



 以前とは違う

 雰囲気に幼さは残っていない




 「・・そちらの女性は、初めましてで良かったのかしら」




 柚香さんの表情がわずかに歪む



 「・・ねぇ、私のことは覚えてる?」


 一歩前に名前が踏み出した


 「もちろん

  あの時の傷はもういいのね」


 「・・おかげさまで

  ・・・ここで何してるの」

 

 開きかけた口をつぐんで伽耶はにっこりと、驚くほど自然にほほ笑んだ





 その表情に釘付けになっていると、柚香のか細い声が耳に飛び込んできた


 「零」

 振り向くと、ペルソナが佇んでいた




 「・・名前

  私のもとへ、久遠寺校長のもとへ帰ってくるんだ」



 「い、や」


 途端にどこから現れたのか、10人近い男たちに囲まれる



 「下がってろ」

 棗が名前の肩を引く



 それと同時に、棗の炎が外側から敵を囲むようにして燃え盛った



 「ナイス!棗!」


 中心に向って伸びあがった影をひとつ残らず、翼が踏みしめる

 ふんと鼻を鳴らした棗は、ペルソナに面と向かう



 苦々しく唇をかむペルソナ



 「名前、戻れ

  さもなくば、いつまでたっても母親はお前のもとには帰さんぞ」


 「・・母さん」



 名前の肩をつかむ棗の手に力が入る

 「はっ

  葵の時だってそうだ

  鼻から帰す気何ざねぇ」




 ゆっくりとペルソナは片手を伽耶に向かって伸ばす

 まがまがしいアリスを放ちながら




 とたん、我を忘れたように名前が棗の後ろから飛び出そうとした


 「母さんっ!!」



 棗は乗り出そうとした名前を力一杯に後ろに立っている翼に向かって突き飛ばし、伽耶の元へと走り出す


 覆いかぶさるようにして伽耶をかばった棗に苦悶の表情が見て取れた

 僅かに掠めたペルソナのアリスが棗の顔に黒い染みを浮き上がらせたのだ



 「っ棗!」

 名前を抱き留めた翼が叫ぶ




 かろうじて伽耶はペルソナのアリスを浴びなかったのか、棗の肩口に手をかけ棗の顔を覗き込んでいる

 


 「わかっただろう

  名前、戻れ」


 威圧するようなペルソナの声が部屋に低く、静かに響く




 後ろから、名前を抱きかかえるように翼が力を込める




 「・・大丈夫だから

  行くな

  あいつも、俺も、柚香さんも・・・お前の母さんも・・・」




 「来い!名前!!」



 「零、何を焦っているの」



 仮面のせいでほとんど見えないペルソナ

 それでも、明らかに顔色が変わったことがその場にいた全員、知っただろう



 「焦り?私が?

  ・・くくっ、何を言い出すかと思ったら」



 「ええ、焦ってるのね

  他国同士の戦争にあなたが興味を持っているとは、考えにくい


  ・・名前ちゃんのアリスを使って甦らせたい人でもいるの?」



 思いもよらなかった柚香の推理



 一同は目を見合わせた






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[mokuji]




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