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アジトの場所は


 「おいっ」



 いらだちを含んだ棗の声




 「アジトから1q離れた場所って、ここかよ」





 驚愕の表情を浮かべるのは、ここが名前たちがアリス学園から抜け出した例の壁の穴だから

 今は、穴も塞がれただの壁の一部でしかないが





 穴が塞がっているということは、学園は脱走について把握しているということ




 
 「どうして、追っ手の気配一つないの」


 決して見つけることが出来ないなんてことはない




 ここは、アリス学園なのだから








 「手厚い歓迎が待ってそうね」

 柚香の言葉に皆がいっそう気を引き閉めた





 「やっぱり、追っかけてこないってことは

  俺たちが戻って来ることを確信してんすかね」


 苦笑い混じりに翼が呟く





 「おそらくね」






 「怖いの?翼先輩」


 「ビビりが」


 「んなわけねぇだろ

  こうちょっと、確認してみただけっつうか」




 「翼先輩、手痛い

  おまけに震えてる」




 「ちげぇよ

  これは、武者震い!そう、武者震いってやつだよ

  この俺が、怖いなんて…」


 3人は翼を放ってチャキチャキと学園内に潜入する計画をたて始めた





 「あ、あれ

  眼中になし?」







 「翼先輩、早く」


 「ボヤボヤすんな」






***
**
*









 学園内に入るのは、出るより容易かった


 余計なアリスを、力を消耗せずに済んだ






 一週間の休みを取って、体力は回復した

 それでも、アリスを無限に使えるわけではない事は分かっているから




 一つ一つのアリスに使う力は最小限に

 この先、何が起こるか分からないのだから、体力の効率を一番に考えなければならない






 大丈夫、皆がいる

 独りじゃない





 私が皆を守る

 皆が私を守ってくれる





 大丈夫

 独りじゃないことがこんなにも心強いのだから







***
**
*






 全員の顔が強張っている





 力の入りすぎた人間の体は、とっさの時の反応を鈍らせてしまう


 適度なリラックスが大切だ






 とは言え、この緊張感を壊したくないという想いもあって、いつもみたいなバカが思い付かない







 「学園の皆はどこ?」

 消えそうな程、小さな声は誰かに話しかけたのかどうか分からない


 「・・・」




 声をかけようとしてやめた


 今、名前に必要なのは気休めの言葉なんかじゃない






 確かな情報

 皆は無事なのかどうかという事実






 柚香さんの後を続いて歩く


 ・・・この方角は








***
**
*






 4人が辿り着いたのは、中等部の地下へと続く道


 名前と翼が茨木のばらに案内されてこっそりと侵入した入り口





 当時と変わらない暗い狭い道





 階段の先は全く見えなくて、底無しなのではないかと錯覚してしまいそうになるほどの暗闇






 棗の火を明かりがわりに4人は順々にに階段を下っていく

 「棗くん、明かりはもういいわ」


 少しだけ息が上がっている棗を気遣って、柚香が声をかける






 「こんぐらい、なんでもねぇ」


 「ここまで来たら、明かりに気づかれるかもしれない

  いいから、火を消して」




 舌を打ち、棗は、軽く名前を睨む



 「・・・正論、でしょ」






 「はっ、スッ転んでも知らねぇ」






 火を消したとたんに鳴り響いた

 ドタン





 「・・・先輩、わざとですか?

  笑いませんよ?」




 「ち、違う」

 皆に暗闇でも分かるような、冷たい視線を浴びせられ翼は片手で鼻を軽く押さえ、もう片方の手を目の前で慌てて振る




 「足元に何かあったんだって」






 その言葉を聞いて柚香が、冷たい床にしゃがみこみ、手探りで辺りを確認し始める


 「・・・隠し扉」



 床には、ひんやりと冷たく滑らかな金属製の取っ手







 「こんなところに、床下収納があるはずもなく・・・」

 「んなわけねぇだろ、バカ」





 グッと柚香が力を入れるとゆっくりと床と扉の境目が露になる






 重そうに持ち上げる柚香の手から、翼が手を添え柚香に変わって扉を持ち上げる



 開いた扉の向こう側には、更に深い暗闇と石造りの螺旋状の階段、石の壁





 「どこまで、降りれば気がすむんだよ」

 苦笑い混じりに翼が呟く






***
**
*







 先ほどよりは、辛くない様子で棗くんが火のアリスを使っている

 中等部校長の姫様のアリスもここまでは届いていないのだろうか






 ・・・それとも、ここの存在を姫様が知らないのか






 いったい、どこまで深い道なのか

 かれこれ、30分は階段を下りはじめてから経っているのではないだろうか




 だんだんと、もう一度地上に上がれることができるのかという不安と、暗闇と狭い地下の階段ということに息苦しさを感じ始めてきた







 石でできた通路は、ひんやりとしていて、空気までもが異様な冷たさを持っているように感じる


 それなのに、額からの汗は止まることはない






 「・・・扉だ」

 その声を聞いて顔をあげると、木造の扉が螺旋階段の最下段の前に見えた









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