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子供

 「殿ー

  俺さぁ、やっぱり名前のこと好きだわ」



  唐突に放たれた言葉に殿内は苦笑いを示す




 「何を今さら」




 
 「久しぶりに姿見て、昔のままのあいつ見て心が凍ったみたいになった

  久しぶりだったんだぜ?会ったら嬉しいが真っ先に来るもんじゃん

  もしかしたら、俺はこのまま会わなかったら会わなかったで何とも思わずに過ごせたんじゃないかって」





 ゆっくりとあげられた翼の表情は涼しげだった
 

 「でも、再会した今となっては、もう分かんねぇや

  もう一度、離れるなんて考えられねぇ

  今、ここにいるこいつをどうやったら守れるのか、頭の中はそんなことで一杯になってるんだ」




 優しい笑顔は、ここ最近見れなかったほどに穏やかで愛情が満ち満ちている




 「俺だって、大概、背筋に寒気が走ったさ

  どんな、アリスの使い方したらって

  一緒にいるときも、何度かリバウンド受けてる姿を見てきたけど、あんなになるまで一人で」





 「名前は、昔から人に頼らない大人びた奴だったから」

 先程とは売って変わって寂しそうな翼の笑顔




 「はぁーー

  ちげぇよ、あいつは大人なんかじゃねぇ

  強すぎる力を持った子供なんだ

  そんで、俺らも子供だったんだ」





 「力の強い子供…」





 「あぁ、その力の強さと雰囲気にばかり目向けて本当のあいつを見ようとしなかった

  いろんな苦労と強すぎるアリスがあいつから子供としての無邪気さを奪って、自立性ばかりを育てた

  回りは回りであいつの能力を評価ばかりするもんだから、お前ならできる、何でもできるって




  人に頼る能力が欠損しちまった

  本当の大人ってのはさ、能力を如何にうまく使い、自分になにができるかを正しく判断するところにあると俺は思う」




 「…殿、たまには良いこと言うじゃん」

 「俺はいつだって、良いことしか言わねぇ」



 少しだけしょげたように翼は

 「俺、名前のことを神様みたいに思ってた

あんなにアリスを使いこなす奴なんか見たことなかった」




 「…いいじゃん、今から名前のこと同等に

  いや、年下の可愛い好きな女の子として見てやれよ



  お前は成長したよ

  強くなった、心も体も

  成長出来なかった名前の分までしっかりしねぇとな」




 ゆっくり頷く翼は少し照れたように顔を伏せた


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