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ネックレス

<<番外編>>




 クラスに転校生が来るらしい

 心読みのアリスで、職員室の様子を探っている





 小さい変わった髪色の女

 心読みの言った通りの女をナルがうざいテンションで連れてくる


 「今日から、このクラスに転校することになりました苗字名前ちゃんです☆

  皆、仲良くしてくださいね☆」



 『はーい!』

 というクラスの奴らの返事とは裏腹に、転校生の眼は笑っていない






 教室からナルが出て行くのを確認した後、転校生に詰め寄る

 それを、少し離れた位置から心配そうに見つめているルカに気付かないふりをする

 「・・お前のアリスは何だよ」





 こっちを振り向くまでの時間が、やけに長く感じた


 「・・言わなきゃいけない・・?」


 動きと同様に、ゆっくりとした小さく、落ち着いた声に気を取られ、意味を頭が理解するまで数秒かかった





 「・・読め」


 クラスの心読みに何のアリスか心を読ませようとしたが

 「あれぇ〜、何でだろ?読めないや」

 ケラケラと笑いながら心読みが答える


 アリスが効かないのかと、クラスがざわざわと騒ぎ始める




 「・・それが、お前のアリスか」

 声を掛けてもこちらを見向きもしないことに苛立ちが募る



 正直、何のアリスかなんてことには、興味はなかったのかもしれない

 それでも、シカトする様子や態度が気に食わず、後に引く気にはなれなかった




 「・・言えよ」

 ボッと火をつけてこれ以上、無視できない状況に追い込む





 クラスには緊張感が漂っているが、こちらにようやく目を向けただけで転校生の表情には全く変化が見られない

 本気で火をつける気はないと高をくくっているのか、それとも自分のアリスによっぽどの自信があるのか



 おもしれぇ、やってやろうじゃないかと火で一面を覆う





 すると、そいつが近くにある机にトンと手をつく、その様子に何をする気かと眉間にしわを寄せる




 「・・火を食べる机のアリス"」

 小さい声だがはっきりと耳に届いた

 途端、手をついていた机がまるで、生き物のように動き出し、まるで暴れ馬を連想させるような奇妙な動きを見せる

 ジタジタと4つ足で走り回りながら、俺の火を吸い込むように食べつくす



 クラスの奴らが、目を剥き、息を呑み、見守る中、再び転校生が口を開いた



 「・・私のアリスは言霊のアリス、あなたは、発火のアリス?

  火自体はあなたのアリスじゃないのね・・

  火をつけるのが、あなたのアリス・・」



 呆然と立ち尽くす俺には、言っている意味が理解できなかった



 発火のアリスだろうと、炎のアリスだろうと火を操れるという点では同じ

 だから、学園ではこの2つは特に区別されることもなく扱われている

 今のこいつのアリスに、そのことが関係あるのだろうか・・





***
**
*






 放課後のチャイムが鳴る




 朝の騒動から1日、俺は転校生から目が離せなくなっている

 名前の様子は、何をするのも気怠そうで、学園の生活を楽しもうとする様子は皆無



 でも、朝の騒ぎの中で使っていた言霊のアリスは、俺のアリスをいとも簡単に破った

 学園から逃げる気になれば、逃げることは容易かったはずなのに、あえてここに来たということは、あいつも・・



 頭の中に、葵の、妹の姿がよぎる




 ふと、教室前方のドアを見るとナルの野郎が転校生向かって、手招きしている

 ナルは何か知ってやがる、後を追えば何かわかるかもしれない




***
**
*





 ナルの向かった先は、職員室ではなく、人通りの少ない廊下だった






 「名前ちゃん、今日の朝のことなんだけど」

 いつもは見られない、真剣な表情で名前のことを見つめているナル





 「騒ぎを起こすつもりは、ありませんでした

  次から気を付けます・・、もう行ってもいいですか?」



 「騒ぎのことを言ってるんじゃないよ

  クラスの子が話してるのを聞いたんだけど、心読み君が名前ちゃんの心を読めなかったんだって?」





 「・・私、読心のアリスを使われてたんですか?そんなことは、知りませんでした

  でも、読まれなかったのなら良かったです」

 スッと視線を外し、立ち去ろうとする名前

 後ろから、キュッとナルが手首をつかむ




 「まだ、話は終わってないよ☆ごまかさないで

  読めなかったのは、アリスでしょ?それも、名前ちゃんのじゃないよね?

  名前ちゃん、面談の時に人体に対してはアリスが使えない、人のアリスを打ち消す
アリスはよっぽど集中しなくちゃ作れないって言ってたよね☆」





 居心地が悪そうに手を引き、ナルから少しでも距離をとろうとする名前





 「棗君のアリスは発火させるアリスで、燃えている火がアリスじゃなかった

  だから、アリスを打ち消すアリスを簡単に作れたんだよね?」




 視線を合わせるようにしゃがみ、名前の手首をつかむ手と反対の手で名前の首筋にスッと触れる



 シャラっと出てきたのは、首にかけたネックレス

 その先についているのは、オレンジと白の混じったような石と真黒な石の2つ




 「・・これ、アリスストーンだよね?どうしたの?誰のアリスストーン?」



 
 「アリスストーンを首から下げるのは、校則違反ですか?私が誰のアリスストーンを持とうと先生には関係ない」

 俯いたまま、語気を荒げて答えた名前

 勢いよくあげた顔に宿った小学生とは思えないほど鋭い眼差しに、ナルは息を呑む




 パンッとナルの手を振り払い、再びネックレスを制服の中へとしまうと、小走りで教室の方へと駆けていく名前





 その表情が、今にも泣きだしそうだったことを柱の陰から様子を伺っていた棗だけが見ていた
 



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